みずがめ座
悲しみを糧に道を開く
柳宗悦の芸術道
今週のみずがめ座は、朝鮮民族美術館を建てた柳宗悦のごとし。あるいは、どうしたら現状の息苦しさから抜け出していけるかを試みていこうとするような星回り。
「民芸運動の父」と呼ばれた柳宗悦は、日本が朝鮮統治を行っていた1924年、日本よりも先に韓国に「新しい平和の家」を建設すべく、京城のかつて景福宮のあった地に朝鮮民族美術館を設立しました。その意図について、柳は次のように書いています。
自分はただに、長く保存すべき作品を、保存するという正当な所置に仕事を止めず深く朝鮮の心に入り、いつかは開くべき蕾を、未知の友の中に見出したいと希っている。芸術の理解がその民族を理解する最も根本的な道だと云う兼々の信念と、芸術が国の差別を超えて、吾々の統合の喜び導く力だという信念とを、具体化せねば止まない決心でいる。
彼はまず自分を語り、それを他者に分かってもらおうとする前に、他者の声にならない声を聞こうとし、そうしてみずからに美とは何かを教えてくれた朝鮮の文化に感謝を捧げるところから「統合」に向けた活動を始めようとしたのでしょう。
つまり、柳にとって人間同士の争いを食い止めるものこそが芸術であり、その原動力となっているのが美であると考えていた訳です。
その意味で、5月5日にみずがめ座から数えて「共同体の基盤」を意味する4番目のおうし座で「自由と解放」の天王星と「活性化」の太陽が重なっていく今週のあなたもまた、差別を超えて大いなる統合へと導く原理にこそ、エネルギーを投入してみるといいでしょう。
「悲」を礎として
「禅」を世界に広めた鈴木大拙は、かつて宗教の役割を「力の争いによる人間全滅の悲運」から人類を救うことにあるのだとして、知識や技術(智)の世界の外に慈悲の世界があることをもはや忘れてしまった現代人を批判しましたが、ではその「慈悲」とはどこか遠くの、人間世界から隔絶したところにいる神のもたらす奇跡なのかと言うと、大拙はそうではないのだと言います。
いわく、「智は悲によつてその力をもつのだといふことに気が付かなくてはならぬ。本当の自由はここから生まれて出る。……少し考へてみて、今日の世界に悲―大悲―があるかどうか、見て欲しいものである。お互ひに猜疑の雲につつまれてゐては、明るい光明が見られぬにきまつてゐるではないか」と。
そして先の柳の一節に引き付けて言えば、「悲」とはおそらく差別する心の奥底に眠っているのであり、それがもたらす悲惨さや残酷さにとことん眼差しを向けていった先で、ようやく見えてくるものなのでしょう。そういう道を、今週のみずがめ座ももまた歩みつつあるのかも知れません。
みずがめ座の今週のキーワード
いつかは開くべき蕾を見出す