みずがめ座
颯爽へといたる道
女心の一念
今週のみずがめ座は、「額上げに攀登(よじのぼ)る岩の千鳥かな」(長谷川かな女)という句のごとし。あるいは、どんなに滑稽に見えようとも望む結果を手に入れるため本気になっていくような星回り。
「千鳥(ちどり)」は冬の海辺を飛んだり、歩いたりしているチドリ類の鳥の総称で、この句では岩の下で冬の潮が荒れ鳴っているなか、哀調をおびた鳴声があたりに響いていたのでしょう。
問題は「額上げに~」の方の解釈で、おそらくは海岸の岩の上に祀ってある神さまに、作者が何か願掛けをして、それが叶ったのかも知れません。それで、神様の名前を書いた神額をあげるために、その岩をよじのぼろうとしたのでしょう。
ところが、ほとんど足場のない切り立った岩であったために、額を持ちながら両手で岩をつかまえて、よじ登るかのようにして岩の上まであがっていった。そしてそこには当然、作者の女心の一念も重ねられていたはずです。
ただ、その一念を遂げるために切り立った岩をよじ登る姿や、それを千鳥の鳴き声とあわせて歌として詠みあげた掲句は、とても女性のものとは思えないほど力強い句となっています。
同様に、17日にみずがめ座から数えて「遂げるべき一念」を意味する7番目のしし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、これはと思った願いや目標へ一心不乱に向き合い直していくにはもってこいのタイミングと言えるでしょう。
滑稽を通り越す
中世のヴェネチアを舞台にした『抜け目ない未亡人』という戯曲があります。あらすじは、財産家と結婚した後、夫と死別した若き未亡人が、再婚でもう一花咲かせようと奮闘するというもの。フランス、イギリス、イタリア、スペインの男達を並べて、誰が一番誠実な男かを試そうと、各国の女性たちに化けてこなをかけるのです。
その様はさながら、鳴かないホトトギスを前に、殺すか、待つか、鳴かせてみせるかを案じる戦国大名。要は、初めからいちゃもんをつけるつもりで男達に対している訳です。
どこか未亡人だけが力み返っているような滑稽さと、女としての意地を貫こうとするいじらしさとが混じり合って、何とも言えないアンビバレントな感情が生まれてくるお話ですが、不思議なのは、どこかそんな未亡人に颯爽たる勢いのようなものが感じられてくるところ。
それは、従来の花のように大事にされる“べき”女性像をかなぐり捨て、自分の生き残りへときっぱりと邁進しているからかも知れません。今週のみずがめ座も、滑稽を通り越したところにある颯爽へと至れるかということが、ひとつのテーマとなってくるでしょう。
みずがめ座の今週のキーワード
額を上げる