みずがめ座
生まれ変わるためのチャレンジ
生きている夢としてのランドスケープ
今週のみずがめ座は、富士山のペンキ絵の入った古い風呂屋のごとし。あるいは、持続可能な夢を継いでいこうとするような星回り。
風呂屋と言えば富士山のペンキ絵と決まっているのですが、あれはただの懐古趣味というだけでなく、あれがああであるのには、それなりの理由があるのだそう。
太い蛇口から熱したお湯がジャージャー流れ出てくるお湯につかっていると、浴槽から立ち昇る湯気の向こう側に、真っ青な海と白く突き出た富士山が広がってきて、真水につかりながら潮の香りを感じさせてくれるのです。
湯治がまだ庶民のつつましやかな夢であったころ、せめて気分だけでも出そうと、富士に松のジャパニーズ・ランドスケープが発案され、それが多くの人に愛好されたのでしょう。つまり、風呂屋というのは単に人間の体を熱するための箱である以上に、庶民の夢がつめこまれたもう一つの現実であった訳です。
そうして作られた箱が、作られて50年たち60年たち、次第にペンキ絵がほころび、壁にも浴槽にも年季が入ってもなお、存続しているという事実は、何より古い夢がまだ生きていることの再確認に他なりません。
その意味で、2月8日にみずがめ座から「古い夢」を意味する4番目のおうし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、どこか懐かしさを感じさせるような古くて新しい夢にどっぷりと浸かってみるといいでしょう。
あえて不安定さをつくり出す
この場合の「古くて新しい夢に浸かる」とは、例えば「エントロピーに逆らう」ということをイメージしてみるといいかも知れません。エントロピーとは「混沌」の意で、宇宙の大原則として、あらゆる物事はエントロピーが増大する方向にしか動いていきません。
秩序あるものは時間の経過とともにカオティックに混乱していき、一点に集まったエネルギーもやがては分散していく。つまり、いくら整理整頓した机でも散らかるし、熱烈な恋もいつかは冷めてしまうのだと。
そんなエントロピーの増大に絶え間なく抵抗しているのが、すべての細胞を入れ替え続けることで死を免れて「生きて」いる人体であり、生命の働きなんです。つまり、生命はつねにエントロピーに従いつつも、時に逆らうことを繰り返している。さらに興味深いことに、生命は細胞が自然に壊れる前に先回りしてみずからを壊し、その不安定さを利用して新しい細胞を作り出す活動をしているのだそう。
これは人生レベルに置き換えれば、基本的にはエントロピーに従って老化や衰え、限界や死などを受け入れつつも、下手に落ち着き過ぎることなく、ときどき羽目を外したり、厚い湯につかったり、サウナに入って整ったりすることで、強さや若さ、しぶとさやみずみずしさを湛えた自分へと生まれ変わるためのチャレンジをしていくのだということ。
そしておそらく、そうしたチャレンジというのは、やがては必ず死が訪れ、宇宙の塵となっていくことを深く感じている人ほど、その必要性を強く感じるようになっていくはず。
みずがめ座の今週のキーワード
細胞を入れ替え