みずがめ座
得体の知れない人になろう
浪花の大ネットワーカー木村蒹葭堂
今週のみずがめ座は、谷文晁の描いた木村蒹葭堂の肖像画のごとし。あるいは、「大愚」の気風を宿していこうとするような星回り。
爛熟期の江戸時代に、大阪で酒造業者をしながら、自邸を知識人の集まるサロンとして、書画や本草学・医学・蘭学などあらゆる分野の貴重な書物や物品を蒐集した木村蒹葭堂(けんかどう)という伝説的な人物がいます。
彼は一体何をした人物なのかと問われると、何もしなかったようでもあるし、あまりにも多くのことをしたようにも思えるのですが、とにかく彼の家には毎日、様々な人が訪れ、また多くの人と手紙のやりとりをして、人びとは彼の影響を受けたようです。その意味で、彼は世間の媒体(メディア)になりきったのだと言えますが、その器の大きさはこうして彼の実績を書いてみても、いまいち掴めない感じが残ります。
ところが、当時の画壇の大御所である谷文晁が描いた彼の肖像画を見ると、それがなんとも特徴的なのです。ぼんやりとした暖かい目に、長く垂れた耳、大きな鼻、そして何より、口を大きくあけて笑っているその表情は、一歩間違えれば愚かにしか見えないのですが、それがギリギリのところで「大愚」すなわち大人物の気風となりえているのは、ひとえに対象へのリスペクトがあったからでしょう。
13日にみずがめ座から数えて「自己開放」を意味する12番目のやぎ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、可能な限り自身を世間にむかって開いていくことがテーマとなっていきそうです。
自分のなかの「天」を広げる
英語のことわざに「天は自ら助くる者を助く」という言葉がありますが、この場合の天とは、“自分の中の何か得体の知れないもの”と言ってしまってもいいでしょう。
それと対極的なのは、例えば友だちの反応や、世間がどう思うかどうかで決断を成そうとする態度ですが、そういう時というのは大抵が、自分を世界の端っこで縮こまって生きているものとして感じているもの。無意識のうちに自分はきっと不幸なはず、幸福にはなれない、というイメージを浮かべてしまっている訳です。
その意味で今週のみずがめ座のテーマは、“自分の中の得体の知れないもの”としての天を心のなかで広げ、できるだけ「私しない」でいくことなのだとも言えるかも知れません。
みずがめ座の今週のキーワード
「私しない」=自分と自分の持っているものを社会に向かって開いておくこと