みずがめ座
飛ぶが如く
こちらは5月24日週の占いです。5月31日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
シーシュポスとプロメテウスのはざま
今週のみずがめ座は、カミュの「我抵抗するゆえに我らあり」という言葉のごとし。あるいは、せっかくの立派な企てが結果的に弱者の抑圧や圧政にならないよう気を付けていくような星回り。
カミュは太平洋戦争の最中である1942年に出版された「シーシュポスの神話」において、神々を二度までも欺いた罰として一個の岩と一つの坂と一つの無意味な作業しか持たず、それらを延々と繰り返さざるを得ないというシーシュポスの置かれた状況に、人類全体の運命を見出しました。
これは不当に貶められ、悲惨な状況にいる人々による、みずからの運命を受容するための戦いとも言えますが、戦後カミュは『抗う人間』において、他人のために人生を捧げ、他人の悲惨さをなんとかしようとして神々に逆らうプロメテウスを主人公として、人間を「現状を否定する唯一の生物」として描き出してみせました。
こうしてカミュはシーシュポスとプロメテウスという二つの人間像を併置させつつ、「一方に美があり、また一方に貶められた人たちがいる。どんなに困難だろうとわたしは決して不実でありたくはない。後者にも、前者にも。」と述べるにいたりました。
つまり、カミュは最終的に先の二つの像の中間にこそ、人間の運命と将来は託しつつ、受容と抵抗を二つながら持ち続けることができるかがその試金石になると考えたのです。
26日にみずがめ座から数えて「中長期的なビジョン」を意味する11番目のいて座で皆既月食(満月)を迎えていく今週のあなたもまた、美への関心と悲惨な状況にいる人びとへの気遣いをいかにして両立させられるかを考えていくべし。
リチャード・バック『かもめのジョナサン』の場合
他のかもめたちは「伝書鳩は飛ぶべき場所を飼い主に仕込まれている」と鳩を馬鹿にしつつも、自分たちが餌をとるためにしか飛ばないことにはったく無自覚だったのに対し、ただひとりジョナサンだけは、「飛ぶ」という行為そのものに価値を見出し、それを純粋に追求していこうとしました。
ただ、じつに奇妙なことに、ジョナサンは「ただ無意味に」飛ぶことを楽しむということの異端さゆえにかもめの群れからは追放されてしまいます。しかしそれでもたった独りで飛行術を追求し続けたジョナサンは、やがて誰よりも早く高く飛ぶことができるようになります。
そしてそれは、かもめとして食うや食わずの生活のから可能な限り遠く離れた、世界のエッジにたどり着かんとする試みであり、ひとりぼっちの孤立でもあると同時に、かもめの運命としての制約からの解放でもありました。
今週のみずがめ座もまた、ただ他者や世間に対して大きな力を持とうとするのではなく、みずからを特定のパターンに規定してくる思考停止とも闘っていきたいところです。
今週のキーワード
ネガティブ・ケイパビリティ(月並な考えに流れないこと、きちんと時間をかけること)