みずがめ座
神聖な生理
笑い笑われ生きていく
今週のみずがめ座は、「おかしいから笑ふよ風の歩兵たち」(鈴木六林男)という句のごとし。あるいは、現実と向きあうにあたって必要な生理に駆られていくような星回り。
句意としては、“おかしいから笑っていることだよ。風の中を歩いている歩兵たちは”。これは一兵卒として戦争に召集された作者が、中国大陸、フィリピン諸島を転戦した経験に基いたものでしょう。
人の死が日常ふつうにある戦場においても、おかしいことはあり、それを笑うだけの理性は残っている。頭が変になって笑っている訳ではないのだ。そのなんと残酷なことか。
「風の歩兵たち」は半ば風に透けていて、死の領域に足を踏み入れている訳ですが、それは「笑い」というものが心の空隙をゆさぶるものであり、笑いのなかで自分自身のそれまで隠れていた側面が顕わになっていくということと無関係ではないはずです。
したがって、歩兵たちはそうして笑うことで、自分自身の愚かさ、救い難さを裁いていると同時に、人間の愚かさ、救い難さをゆるしているのだとも言えるかも知れません。
13日にみずがめ座から数えて「禊ぎ」を意味する12番目のやぎ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、残酷な現実を曖昧にして誤魔化してしまうのではなく、きちんと向き合っていくことが少なからずテーマとなっていくでしょう。
望みの出どころを洗い出す
『進撃の巨人』という漫画作品において、特に目を引くのは人類が「人を喰う巨人」に囲まれているという設定でした。彼ら巨人はみな少しいびつな人間の姿で、威嚇的な角や牙を持っている訳ではありませんが、こちらがいかなる方策を講じても意思疎通ができず、それにも関わらず感情を持ち、知恵もある。そんな巨人が自分(人間)を捕食対象として見なし、次々と迫って来るという設定は、なんとも言えない根源的不気味さがあります。
しかし考えてみれば、「自分が望んでいるものを必ず得る」という強い決意を固め、目的のためには手段を選ばなくなった人間というのは、先の太平洋戦時中の兵士たちの置かれた現実を考えても、そんな風に見えてしまうものなのかも知れません。
こういう例を挙げるとネガティブに聞こえてしまうかもしれませんが、今週のみずがめ座のあなたが問われなければならないのは、「その望みは他の誰かに負わされたものではなく、本当に自分の心からの望みなのか?」ということ。
そんな問いを自身に向けつつ、おかしかったらそれを笑うくらいの理性を保っていきたいところです。
今週のキーワード
隠れたる神の出現としての笑い