みずがめ座
宇宙船武蔵野号
「武蔵野」とはどこか?
今週のみずがめ座は、「武蔵野は十一月の欅かな」(松根東洋城)という句のごとし。あるいは、自分がどこに立っているのかを改めて知っていくような星回り。
「どこまでもつづく原野」として、古来よりさまざまな文芸や美術作品にインスピレーションを与えてきた「武蔵野」を題材とした一句。
句の「武蔵野」が具体的にどこを指すのかは不明ですが、現在の武蔵野市でいえば成蹊大学通りの欅(けやき)並木が有名で、すっかり黄葉した通りを歩いているとなんともさわやかな空気が肺に広がって心地よさを感じます。
ただ、欅が植樹されたのは大正末期で、それ以前の明治の時代には欅ではなくもっぱら楢(なら)の林の美しさで知られていたのだとか。しかしそれも、11世紀に書かれた『更級日記』などをひも解けば、「蘆(あし)・荻(おぎ)のみ高く生ひて、馬に乗りて弓もたる末見えぬまで高く生ひ茂」った土地として描かれていることが分かります。
そもそも、「武蔵野」というとなんとなくいまの武蔵野市あたりをイメージしてしまいますが、現在の渋谷などを含め、もっと広大な地域を指す呼称だったのです。
11月1日にみずがめ座から数えて「バックグラウンド」を意味する4番目のおうし座にある天王星の真向かいに太陽が巡り、そこへ否応なく意識が向いていく今週のあなたもまた、不意に自身の生物的・地理的・思想的な背景が前景化してくるようなきっかけに突き当たっていくかも知れません。
天を仰ぐこと
「天は自ら助くる者を助く(Heaven helps those who help themselves.)」という英語のことわざがありますが、漫画『バカボンド』にも似た言葉として、無謀にもひとりで柳生の城に挑んでいく際に、「(たとえ人は笑おうとも)天は笑いはしない」というセリフが出てきます。
この場合の「天」とは、「自分の中の何か得体の知れないもの」と言ってしまってもいいかも知れません。それと対極的なのは、例えば親や恋人や友だちなど特定の他者の反応や、世間がどう思うかどうかで決断を成そうとする態度でしょう。
そして後者に著しく傾いている場合、大抵は自分を世界の端っこでちぢこまって生きているように感じていたり、無意識のうちに自分はきっと不幸なはず、幸福にはなれない、というイメージを浮かべてしまっているはず。
今週のみずがめ座は、そんな「得体の知れないもの」が、自分を支えてくれている大地にも広がっているのだと想像してみること。得体の知れない背景が、自分にどんな景色を見せてくれようとしているのか、それに応えるにはどうしたらいいか。
そんな基準を立てることで、不必要な思い込みを排していくといいでしょう。
今週のキーワード
「地球は笑いはしない」