みずがめ座
地下でうごめく
沼に沈める
今週のみずがめ座は、コルソン・ホワイトヘッドの『地下鉄道』のごとし。あるいは、他人事を他人事のまま終わらせないための試みを実行していくような星回り。
まだ黒人が奴隷とされ、自由を獲得して生きようと考えることさえ「まともじゃない」とされた時代に、奴隷少女の逃亡譚を主軸に、彼らの逃亡を支援する地下組織を描いた作品。
歴史的事実として19世紀に実際に存在したのは「地下鉄道」という組織名だけだったのですが、本書ではそれが作者の想像力によって再構成され、本当の地下鉄として描かれていくのです。「地下」はそうした移動が非合法であること、鉄道は自由への道を意味して。
昨今の「Black Lives Matter」の動きを見ていても、多くの人が2020年の今なおあからさまな人種差別の問題が、まったく終わることなく残っていると思い知らされたことと思います。
しかしその一方で、他者の痛みを知って自分事へと結びつけることの難しさに改めて直面している人も多いはずですが、それは人間が人間を差別するときの無自覚さの問題と表裏に関係にあるのではないでしょうか。
31日にみずがめ座から数えて「プライベート領域」を意味する4番目のおうし座で、「抵抗」の星である天王星とともに満月を迎えていく今週のあなたにおいても、これまで他人事としか感じられなかった問題を、妄想や想像をまじえて我が事へと沈めていくことがテーマとなっていきそうです。
無縁者と仲良くなるか、無縁者となるか
縁結びや縁切りが人間の社会生活の根源と直結する振る舞いであるように、家出や離婚などを契機に発現する「無縁の原理」もまた時代によって変わることなく働き続ける普遍的なものと言えます。
その観点からすれば、人間社会の有縁(一般的な社会生活が成り立っている状態)のみを現実と見ることは不適切であり、無縁と有縁の両者をともに捉え、その相互作用を見ていくことはみずからの生(性)を深めていく上で欠かせない過程なのです。
なお、こうした縁・無縁の呼吸を自ら生きた者を、歴史家の網野義彦は「無縁者」と呼び、具体的には遍歴する職人、禅律僧、非人、悪党、遊女などが存在しました。
現代社会においても芸能人やアーティスト、フルーランスの人などもこれらの無縁者の系譜に該当していく訳ですが、あなた自身はどの位置にいますか?
汚穢の中にある者こそが、神聖なる存在である。今週はそんな感覚を、実地で経験していくにはちょうどいいタイミングとなっていくでしょう。
今週のキーワード
歩き巫女