みずがめ座
物語には神秘を
物語をいかに作るか?
今週のみずがめ座は、ガルシア=マルケスの『物語の作り方』のごとし。すなわち、不意の飛躍をどうにか意図的に取り入れていこうとするような星回り。
キューバの映画学校で若手脚本家やその卵を対象に行われた、30分のテレビドラマの脚本を仕上げるためのワークショップや討論をまとめたこの本には、ある印象的なシーンがあります。
それは、誰かがヘリコプターが雄牛を吊るしてプールの上を飛ぶシーンを提案すると、マルケスが、これで決まりだ、そのシーンで始めればいい、とまで言う。こういうシーンが浮かんだら、もう勝ったようなものだと。
あるいは、昭和天皇崩御の記事の写真から、皇后のさしていた雨傘に着目し、ここにインスピレーションを生み出す何かがあると訴えるのです。
こうした決定的なディティールやシーンから、ひとつの物語がたちあがっていくということについて、マルケスは参加者に向けて次のようにも言い直しています。
このストーリーには気違いじみたところがない、そう言いたいんだ。君たちは真面目過ぎるんだよ。
つまり、すべてを原因と結果の連鎖でつなぐ必要はないし、むしろどこかに必ず気まぐれな、ただ、なにか神秘的な要素がなければならないのだと。
17日にみずがめ座から数えて「意識の拡大」を意味する9番目のてんびん座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、辻褄が合わなかったり、論理的には説明できないけれど、自分や自分の人生にはどうしても必要なものを見出していくことがテーマとなっていくでしょう。
虚空を掴もうとすること
例えば、代表作の『一千一秒物語』などで知られる作家の稲垣足穂は「生涯をかけて虚空を掴まんとせし者ここに眠る」という墓標を、実際に死ぬ20年以上も前に決めていたそうです。
非現実の中に現実を見出し、現実へと噴出してくる夢の中の続きを追うかのような今週のみずがめ座にとって、そんなタルホの姿は大いに励みになっていくでしょう。
吾々は一生涯を通じて一枚の絵を描かなくてもよく、一行の詩を作らなくてもよい。ただ描き作らんとする念願さえ持っているならば……(稲垣足穂、「人生は短く芸術は長い」)
今週のキーワード
原稿用紙一枚分の人生とその冒頭の一文