みずがめ座
得体の知れない私を生きる
宙ぶらりんであるということ
今週のみずがめ座は、「あたたかなたぶららさなり雨のふる」(小津夜景)という句のごとし。あるいは、もう元には戻れない寂しさを噛みしめながらとぼとぼ歩いていくような星回り。
「たぶららさ」とは、ラテン語で「何も書かれていない白紙」を意味する言葉ですが、そんなことがどうでもよくなるほど、純粋に「たたかな」と「ららさな」という二つの音が響きあい、そこに雨がふってくるというイメージの完成度に驚いてしまう一句。
そこでは、「白紙」という意味自体がいったん白紙状態になりつつも、ぎりぎりのところで輪郭を失わずに、変化していく体感のいまがうつし取られています。
変わりゆくものと、変わらないもの。それらの比率は常に変動しながらも、わたしという存在を構成し続けていく。
これは言い換えれば、私たちは完全なる「白紙」にも戻れず、かといって真に納得のいく「テキスト」にも到達できない、じつに宙ぶらりんな状態を生きていく他ないということでもあります。
6月6日にみずがめ座から数えて「交換と循環」を意味する11番目のいて座で、満月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな空中に浮いているような妙な居心地の悪さを思い出しつつ、それでも生き続けていくことの面白さに感じ入っていくことになりそうです。
人事を尽して天を仰ぐ
「天は自ら助くる者を助く(Heaven helps those who help themselves.)」という英語のことわざがありますが、浦沢直樹の漫画『バカボンド』にも、無謀にもひとりで柳生の城に挑んでいく際に、「(人は笑おうと)天は笑いはしない」という似たセリフが出てきます。
この場合の「天」とは、「自分の中の何か得体の知れないもの」と言ってしまってもいいかも知れません。その意味で、「天を仰ぐ」のと対極的なのは、例えば友だちの反応や、世間がどう思うかで決断を成そうとする態度でしょう。
そういう時というのは大抵が、自分を世界の端っこで縮こまって生きているものと感じており、無意識のうちに自分はきっと不幸なはず、幸福にはなれない、というイメージを浮かべてしまっているはず。
今週のあなたのテーマは、「自分の中の得体の知れないもの」としての天を大きく広げ、改めてそこに向かって身を投げ込んでいくこと。不要な思い込みさえ排除していければ、案外「天」は、あたたかな雨という形で応えてくれるのではないでしょうか。
今週のキーワード
「白紙」と「テキスト」のはざま