みずがめ座
世界から引きこもる
離脱の感覚
今週のみずがめ座は、「夢殿にもたれて冬の一日かな」(松瀬青々)という句のごとし。あるいは、世界の裏側へと回りこんでいくような星回り。
作者は明治の大坂に生まれ、古きよき町人文化を土壌に育まれた人であり、いったんは上京して東京に住んだことありましたが、結局すぐに大坂に戻りかの地で俳句を詠み続けました。
俳句には、詠む人の土壌性のようなものがよく滲み出てくるものであり、掲句も、奈良の法隆寺の「夢殿」を身近に感じられる関西圏の人の肌感覚のようなものが息づいているように思います。
小春日和のひなたで、夢を見ているような心地だったのでしょう。「もたれて」という一語が印象的な一句であり、また老境に達してきたかのような今のみずがめ座の運気の流れを象徴しているかのような句でもあります。
今あなたには、その身をもたれかけさせられるような馴染みある土壌や、安心して夢見心地になれるような自分だけの聖域はあるでしょうか。
22日(日)に今週は、ひとつのサイクルの終わりに際して、ここ1年の自分やこれまでの人生を振り返り、整理していくのにはちょうどいいタイミングとなっていきそうです。
『魔の山』のハンス
「ひとりの単純な青年が、夏の盛りに故郷ハンブルグを発ち、グラウヴェンデン州ダウオス・プラッツへ向かった。
三週間の予定で人々を訪ねようというのである」(トーマス・マン、『魔の山』冒頭) 山の上にあるサナトリウム(当時は不治の病であった結核患者のための療養所)に入っていた従兄弟の見舞いに行った主人公の青年ハンスは、結果的に長期滞在を余儀なくされてしまいます。
数年が飛ぶように過ぎていき、その間にごく平凡な青年だった主人公は、世界中の国々から集まった様々な考えを持つ患者たちと触れ合ううちに、物事について深く考えるようになっていっていく、とそんなお話なのですが、この主人公はまさにもう一人の今週のあなたと言っていいでしょう。
あるいは、自分への深いメッセージを携えた本を一冊選んで、じっくり時間をかけて読んでみるのもいいかも知れませんね。
今週のキーワード
直線的な時間の流れから離れる