みずがめ座
アイデンティティの奥行き
「ご先祖さまになるんだ」
今週のみずがめ座は、柳田國男の『先祖の話』のごとし。あるいは、何が自分を支えてくれているのかという実感を、改めて深めていこうとするような星回り。
柳田國男の『先祖の話』には、自分からご先祖様になるんだと言っている男が出てきます。その人は、はんてんを重ねて着て、ゴム長靴を履いている白髪の老人で、もとは大工さんをしていたのだと言います。
兵隊として戦争にも行き、それから結婚して子供を育て、さらに孫もでき、既に自分の墓まである。それで、そのうち自分もご先祖様になるんだと言っているという話なんです。
こういう人は、もう所属する会社や職業や、過去の実績、持てる財産なんかはもう自分のアイデンティティを支えていません。自分を支えているのはご先祖様であって、自分もその一員になるんだということがアイデンティティとなっている。これは強いですよ。
柳田はそれにすごく感動している訳ですが、それは彼こそ近代化の過程で失われ、また見えにくくなっていった日本人としてのアイデンティティを研究し求め続けた人だったからでしょう。
その意味で、12日(火)にみずがめ座から数えて「心理的基盤」を意味する4番目のおうし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分のアイデンティティがどこにあるのかがいつも以上に浮き彫りになりやすいタイミングと言えそうです。
生死の境でお会いしましょう
以前、死について語り合う座談会に参加したことがあります。それぞれが自分の思う死についての観念や思い入れ、身近なエピソードなどを語っていくのですが、その実そこにいる全員が死とは何かを知りません。まだ、生きているがゆえに。
つまり、死について語ろうとする生者は、自分にとって身近だった死、すなわち死者の記憶について語らざるを得ません。そのために、死について語り合おうとすると、往々にして家族についての話となり、すると座談会は次第に死者の集まりへと転じていきます。
さらに、今はまだ生きている自分も、やがて生の記憶を抱いて死者となる存在でもあることを自覚するなら、生きているか死んでいるかということは、存在の記憶が明滅している「現象」に過ぎなくなり、両者の区別もなくなっていくのです。
今週は、あなたにとってかけがえのない他者、今はもう生きていない誰かへの喪失感やかなしみを改めて引き受けていくことで、それを感謝(アイデンティティ)へと変えていくことができるかも知れません。
今週のキーワード
私が私であるということが、いつまでもよく分からない