みずがめ座
交錯するまなざしの中で
天使(死者)の視点を
今週のみずがめ座は、ヴィム・ヴェンダースの「二重画面法」という映画技法のごとし。あるいは、他界からこの世を見つめるまなざしを導入していくような星回り。
『ベルリン・天使の詩』を撮ったヴェンダースは、映画の中で死者に他ならない天使たちとこの世との交流というセッティングで、画面いっぱいに死や死者の気配を溢れさせてみせた。
そこでは死者(天使)たちはまるで寄り添うようにこの世に浸潤し、生者のかたわらに佇んでいる。そのことが初めて明らかになる図書館のシーンなどは、圧倒的だった。
そしてそんなヴェンダースの映像には「二重画面法」という秘密があった。
①白黒画面(死者から見た沈痛かつ荘重なこの世の風景)
②天然色画面(この世に生きる時に初めて開けてくる風景。こちらは異様に明るい)
とを頻繁に交替させていったのだ。
そうして両者のまなざしが交錯していくうちに、映画を見ている側もまた、この世に帰還する死者(天使)たち同様に、奇妙なまなざしの反転を余儀なくされていく。
すわなち、ふだんこの世に没頭して生きている生活者のまなざしが相対化され、いま一度この世この生の最大限の肯定性を見つめ直す思考回路が準備されていく。
そして、こうしたヴェンダースの意図は、おそらく今週のみずがめ座のテーマとも重なっていくだろう。
14日(月)に早朝に迎えるおひつじ座の満月は、みずがめ座から数えて「新しみ」を意味する3番目の位置にあたるが、それはこの映画が体験させてくれる鮮烈さをどうしても思い起こさせる。
まなざしの中に死者を宿す
『ベルリン・天使の詩』には、この世に帰還する主人公のセリフとして、
「背後世界なんてごめんだ。天上で学んだ知恵を、これからは地上で生かしていく……」
という思わずはっとするようなセリフが出てくる。
ヴェンダースは『ベルリン・天使の詩』の続編『時の翼にのって』では、前作の種明かしでもするかのように、天使たちによりはっきりとこう言わせている。
「われら(死者なる天使)を通して世界を見てください……
あなたたち(生者なる観客)のまなざしの中に、われらを住まわせてください。」
ヴェンダースに言われるまでもなく、確かにこの世を生きるとは、死者との共同生活を送るということでもあるのだろう。今週はそうした古くて新しい考えに、自然と親しんでいくことができるはず。
今週のキーワード
カタバシス(ギリシャ語で地の底、死者の住む冥府に降りていくこと)