みずがめ座
伝え方の実験
違和感を殺さないために
今週のみずがめ座は、「猫ですしじゃあ何でちまき食ってんのって話だわな」(福田若之)という句のごとし。あるいは、これまでの経験に基づき、細心の注意を払って、自分の実感を他の誰かへと伝えていくような星回り。
これはどういう場面なのか全然分からないんですけど、なんだかニヤリとおもしろく感じられてくる一句です。ちょうどアリスのチェシャ猫のように、何もない空間から突然場違いなものが湧いて出てきたかのようなオーパーツ感があると言うか。
こういうなまなましい現場感覚が、言葉にすることで失われてしまうのではなく、逆にキレを増して表現されていること自体が驚くべきことなんですが、ちゃんと裏側の気遣いをことさら感じさせない工夫もなされている。
「じゃあ何でちまき食ってんのって話だわな」というところなんか、まるで落語みたいですしね。
そういう意味では、違和感を殺さないように何かを伝えていくためにはそれなりの技術と工夫が必要なのだ、という今週のあなたのテーマをまさに象徴するようでもあります。
今週は、ある種の実験をしてみるつもりで、自分の実感の伝え方についてひと工夫凝らしてみるといいでしょう。
こんな夢を見た
まだ天動説の世界をみなが当たり前に生きていた17世紀初頭、ケプラーの法則で地動説を決定づけたケプラーは、そうした天文学的業績を重ねる一方で『ケプラーの夢』という「SF小説のはしり」とも呼ぶべき作品を書いていました(出版は死後)。
この物語で主人公は、日光は嫌うが夜には出かけることのできる精霊の力を借りて、フォルファ(地球)からレファニア島(月世界)へ4時間でたどり着き、地球が月からどのように見えるかが想像力に富んだ記述で示されています。
もともとこの作品は、コペルニクスの地動説を擁護するため、「地球の居住者にとって月の運行がはっきりと見ることができるのと同じように、月面の観測者は惑星の運行を理解することができる」と提唱する学位論文として始められたものだったそう。
これは彼の地道で忍耐強い天文学的業績もまた、非常に先駆的な実験的試みによって支えられていたということの証左とも言えます。
今週は、それくらいルナティックになってみるくらいでちょうどいいのかもしれません。
今週のキーワード
自己表現におけるコペルニクス的転回