
おとめ座
揺るがぬ矜持

平凡な日常こそ主戦場
今週のおとめ座は、『春の雪青菜を茹でてゐたる間も』(細見綾子)という句のごとし。あるいは、ささやかながらも畳みかけるように自身の核心をなぞっていくような星回り。
老境に入りつつあった70手前で詠んだ作品。作者はふだんの暮らしの中で感じたことを、敏感な魂と平明な言葉遣いでもって表現する俳人でした。
朝から春の雪が降っていたのでしょう。季節外れの、思いがけない調子と晴れやかな印象から「桜隠し」という呼び名もあり、作者もどこかしらはなやいだ気分でいたのかも知れません。
ただそんな中でも、作者は家事から離れることなく台所に立ち、青菜を茹でていた。それがかえって、何気ない日常に鮮やかな色彩を浮かびがらせる効果をもたらしたのでしょう。
ちょうど、塩を加えてたっぷりのお湯でゆで、ゆであがったら冷水にさらすと、青菜がより鮮やかな色と歯ごたえに仕上がるように。
作者の再婚相手は、社会の問題をあつかう「社会性俳句」の旗手として知られる人物でした。しかし、そんな夫の仕事ぶりに影響を受けないはずがない立場にいながら、それでもこうした日常の身辺をみずみずしく詠み続けたところに、作者なりの揺るがぬ矜持(きょうじ)を感じずにはいられません。
4月13日におとめ座から数えて「生きがい」を意味する2番目の星座であるてんびん座で満月(感謝による解放)を迎えていく今週のあなたもまた、一見すると平凡に見えるような日常こそが自分の主戦場なのだというという確信を深めていくことでしょう。
素朴の美
風流を楽しむと言えば、これまでは金も時間も学識も美感も揃っていないとなかなか出来ない贅沢であり、教養とはそうした文化的コードに乗っかったり、楽しんだりする力のことを指してきました。
しかし、あらゆる文化的コードが溢れかえって混線状態にある現代社会においては、むしろ最も教養があるのはむしろそうした伝統的な風流を捨て、教養人ぶらずにいられる人であるように思います。
つまり、ただ素朴な人生やさびしい自然の風情にひたりたいと思う心が、肉体的にわいてくるまま、孤独な人間存在自身のさびしさを余計な知識や自分ツッコミをはさまずに直接感じていけるということ。
それはたとえば、掲句のような鬱屈したところのない台所俳句のような、かすかに生活感が漂う何気ない仕方でこそ最も発揮されていくのではないでしょうか。
というのも、素朴の美というのはどこか色褪せたろころがあることが大切であり、新商品や新サービスが目まぐるしく展開されていく資本主義社会では色褪せた方が金の価値は下がる一方で、美的価値は逆に向上するからです。
今週のおとめ座もまた、そうした自分なりの美意識の活かしどころについて、改めて思うところが出てくるはず。
おとめ座の今週のキーワード
乱数的自然のわびさび





