おとめ座
武器をとり夢を放つ
※2021年3月1日~3月7日の週間占いは、公開を延期とさせていただきます。(2021年2月28日追記)
ボードレールの「香水の壜」
今週のおとめ座は、「覗く人」としてのボードレールのごとし。あるいは、脳髄の祝祭という時間を生きるような星回り。
かつてベンヤミンはボードレールの代表作を取りあげて「武器庫としての『悪の華』」と書きましたが、例えばその中の「香水の壜」という詩をここに引用してみましょう。
どんな物質(もの)にも気孔(きこう)があると思われるほど強力な
匂ひがあつて、ガラスさえ透してしまふと人は言ふ。
錠前が錆びて軋んで 痛さうな音(ね)をあげながら
東洋渡来の小匣(こばこ)の蓋(ふた)が 開けられた時とか、或は、
住む人もない廃屋(あばらや)で、歳月の黴くさい臭ひに満ちた
埃の積もつた眞黒な 衣装箪笥を開けた時、
時をり人は 昔の壜を見つけ出す。思出が詰められてゐる
その中から 魂が蘇つて来て 生き生きと 迸り出る。
ボードレールはかつての体験をずっと後になってから加工していく詩人であり、その原稿は推敲につぐ推敲で嵐のようにごった返しており、いったい何度加筆の手を入れたのか分からないほどだったと言います。
そうして彼は記憶の中の「廃屋」の引き出しに封じられた「思出」をこれでもかと覗いては、事物どうしの化学反応においてよみがえる悪を昇華して、あえて精神の「苦味」のもたらす快楽に溺れていったのです。
27日に自分自身の星座であるおとめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分なりの「衣装箪笥」や「昔の壜」を見出して大いに精神を昂ぶらせていきたいところ。
三上寛の「夢は夜ひらく」
生きていれば、みずからの胸のうちに苦い思いが溜まってしまうことがあるものです。しかし、そこでただ愚痴やストレス発散に向かうのではなく、ひとつの「夢」へと昇華させていくことこそ、今週のおとめ座のテーマなのだと言えるでしょう。
その点、かつてライブに登場した三上寛さんは、誰も知ってる「夢は夜ひらく」に、全身全霊でオリジナルの歌詞をのせて歌い、そのライブは伝説となりましたが、それくらいの猛烈なエネルギーの発露が今のあなたにも必要なのかも知れません。
七(質)に二(荷)をたしゃ九(苦)になるが
九(苦)になりゃまだまだいいほうで
四(死)に四(死)を足しても九(苦)になって
夢は夜ゆらく八百屋の裏で泣いていた/子ども背負った泥棒よ
キャベツひとつ盗むのに/涙はいらないぜ
今週のキーワード
「私が自分に問いかけるとき、私自身の奥底から説明のつかぬ夢が、生れでる。」(M・フーコー『狂気の歴史』)