おうし座
不可欠な夢想とその行方
実存のテーブルにて
今週のおうし座は、ランプの灯されたテーブルに坐っている瞑想者のごとし。あるいは、無から物語を作っていこうとするような星回り。
孤独な仕事のために設えられた真の空間とは、明るくピカピカで広々としたものではなく、得てして小さな部屋の適度にくたびれたランプに照らし出された輪のなかにあるものです。
ランプのもとで読み、書き、あるいは瞑想に耽る不屈の働き手にとって、みずからを満ちたりた沈黙へと誘ってくれるのは、まだ終わっていない仕事の空白と、思い出と夢想とが溶け合うランプの荒涼たる輝きという2つの極みに他ならず、そのあいだに身を置き、引き裂かれていくことこそが孤独を味わい深いものにしてくれるのではないでしょうか。
というより、そうして初めて私たちは実存のテーブルにつくことができる。すなわち、人生のさまざまな経験が縦横に裂け、そこで張りつめた実存の緊張を和らげるように、静かで安息した夢想やイマージュがそっと浮かびあがってくる。その時ようやく働き手はテーブルの上に広げられた白紙を埋めることができるのです。
その際テーブルを照らすのは、やはりスイッチひとつで灯される蛍光灯の明かりではなく、こちらが親しみをもって接してやる必要のある内気なランプでなければならないはず。
11月8日に自分自身の星座であるおうし座で皆既月食を迎えていく今週のあなたもまた、「ランプ」という古い語をみずからの日常のなかに招き入れ、精神の再構築をはかっていきたいところです。
物語をいかにできるか?
キューバの映画学校で若手脚本家やその卵を対象に行われた、30分のテレビドラマの脚本を仕上げるためのワークショップや討論をまとめたガルシア=マルケスの『物語の作り方』には、幾つかの強烈に印象に残るシーンがあります。
例えば、誰かがヘリコプターが雄牛を吊るしてプールの上を飛ぶシーンを提案すると、マルケスが、これで決まりだ、そのシーンで始めればいい、こういうシーンが浮かんだらもう勝ったようなものなのだ、とまで言う。あるいは、昭和天皇崩御の記事の写真から、皇后のさしていた雨傘に着目し、ここにインスピレーションを生み出す何かがあると訴えるのです。
こうした決定的なディテールやシーンから、ひとつの物語がたちあがっていくということについて、マルケスは参加者に向けて次のように言い直しています。
このストーリーには気違いじみたところがない、そう言いたいんだ。君たちは真面目過ぎるんだよ。
つまり、すべてを原因と結果の連鎖でつなぐ必要はないし、むしろどこかに必ず気まぐれな、ただなにか神秘的な要素がなければならないのだと。おそらく、実存のテーブルでランプの灯りのもとに浮かんでくる夢想やイマージュというのも、こうした物語に不可欠な要素としての神秘なのでしょう。
今週のおうし座もまた、論理的には説明できないけれど、自分や自分の人生にはどうしても必要なものを見出し、物語へと展開していくことが改めてテーマとなっていきそうです。
おうし座の今週のキーワード
一回性の神秘