おうし座
さっぱりとした後味とともに
こちらは7月19日週の占いです。7月26日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
定年と諦念
今週のおうし座は、「定年の前に辞めしと冷奴」(遠藤若狭男)という句のごとし。あるいは、いい意味での諦めをもって踏み切っていこうとするような星回り。
作者は昭和23年生まれのいわゆる団塊の世代の人で、若さから上京して長らく高校教師をしながら作句活動をしていた。この句は、知り合いが定年前に勤め先を辞めたのだという話を聞かされて詠まれたもの。
俳句仲間なのかも知れませんが、どちらかというと久しぶりに会った学生時代の友人という雰囲気で、居酒屋で冷奴(ひややっこ)でもつつきながら打ち明けられたのでしょう。
当時は今のように会社員をやめてフリーランスでやっていくなんて人はまだほとんどいなかった時代でしたから、作者も心配の声を発した一方で、どこか羨ましいという気持ちが湧いてきたことにも気付いたはず。
ひとしきり飲んで別れたあとの帰り道で、きっと作者は「お前はどうなんだ」と自問したのではなかったか。
24日におうし座から数えて「やるべき仕事」を意味する10番目のみずがめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、惰性に流されるのではなく、どこかで諦めをもって自分の仕事を選んでいきたいところです。
捨聖(すてひじり)の極意
諦めの実践ということで思い出されるのは、鎌倉時代のお坊さんである一遍上人のこと。一遍は、この世の人情を捨て、縁を捨て、家を捨て、郷里を捨て、名誉財産を捨て、己を捨てという具合に、一切の執着を捨てて、全国を乞食同然の格好で行脚していきました。そしてその心中に絶えずあったのは彼が「わが先達」として敬愛した空也上人による、次のような教えだったのです。
念仏の行者は智恵をも愚痴をもすて、善悪の境界をもすて、貴賤高下の道理をもすて、地獄をおそるる心をもすて、極楽を願ふ心をもすて、又諸宗の悟りをもすて、一切の事をすてて申す念仏こそ、弥陀超世の本願にもっともかなひ候へ。(『一遍上人語録』)
こうして捨てることのレベルを上げて畳みかけていった先で、一遍は「捨ててこそ見るべかりけれ世の中をすつるも捨てぬならひ有りとは」という歌を詠みました。いわく、捨てきれるだろうかというためらいさえも捨ててしまえばいい。あらゆるものを捨てた気になって初めて、捨てきれないものがあることに気付くのである、と。
おそらく、自分にとっての「やるべき仕事」というのも、そういうものでしょう。今週は、折に触れて一遍の歌を読んでみるといいかも知れません。
おうし座の今週のキーワード
一切の事をすてて申す念仏