おうし座
心地よくいるための儀式
デザインと気の循環
今週のおうし座は、コの字型の大衆酒場のごとし。あるいは、みずからが気持ちよくいられる場や時間をみずから作り出していこうとするような星回り。
アメリカ出身の日本文化研究者マイク・モラスキーの『呑めば、都:居酒屋の東京』は、赤羽や西荻窪など長年の呑み歩き体験をもとに、都会生活における居酒屋の日本独特の役割について言及しており、特に「居酒屋は、味より人」であり、「ひとりで立ち寄っても、誰かと共にいる感じがして、楽しく呑めるのがよい店」という主張を繰り返し強調します。
美味い酒とつまみなら通販や自炊でいくらでも代用できますが、強制された訳でもなく自然と集まった常連たちが、互いにノリや発言を読みあうことで醸成されるその店独自の<空気>は、居酒屋でしか経験できないものでしょう。
特にさまざまな形や規模のカウンターが見られる中で、比率では一番多くなくても、最も客同士のあいだで共同体意識が生み出されるのが「コの字」なのだと言います。まっすぐなカウンターの場合、両隣の席の客以外はほとんど意識されませんし、「L字型」はそれに比べれば多少目に入るものの、やはり誰もが他の客の“顔”を見ることができ、また見られているという点で「コの字型」には及ばないのだそうです。
20日におうし座から数えて「場づくり」を意味する4番目のしし座で、上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、客を自然と呼び込み常連にしてしまうような居心地のいい雰囲気を追求していくべし。
ケボカイの儀式
場づくりと宗教的儀礼には深い関わりがありますが、例えば、古来より仕方での狩猟を行う「マタギ」もまた、独特の儀礼文化を代々伝えてきました。
彼らは基本的に「山は山神様が支配するところであり、クマは山神様からの授かり物」であると信じており、獲物を授かるための儀式を大切にします。中でも、特に大切にされているのは「ケボカイの儀式」というもので、これは射ち獲ったクマの頭を北に向け、左の足を下にして仰向けにし、次に塩をふって唱え言葉を三度繰り返すという神事。
ひるがえって、普段私たちは既に殺された牛や豚、鶏、魚たちをスーパーで買って食べていのちを繋いでいる訳ですが、それは「日々殺しを買っている」のと同じこと。しかし、それを意識して過ごしている人はほとんどいないでしょう。
ここでなにもマタギを賞賛して、かつての習慣に帰ろうと言っている訳ではありません。ただ、普段忘れてしまっていますが、私たちはみな殺戮者の子孫であり、すべての人には自然やこの世界に育ててもらった「借り」があり、「義務」という概念の根本にはそうした事実があるのだということを思い出してほしいのです。
今週のおうし座は、いま自分が抱えている欲望が自然なギブ&テイクのサイクルにおいてどれくらい適切なものなのか、いったん考え直してみるといいかも知れません。
今週のキーワード
欲望を整える