おうし座
野を駆け行く吾
複雑でいてやわらかい情緒の色
今週のおうし座は、「吾も春の野に下り立てば紫に」(星野立子)という句のごとし。あるいは、固くなって立ち止まっていないで生き生きと駆けていくような星回り。
春の野の萌え出た草の色は美しい。それは一面のみどりではあるが、その中に紫色が潜んでいるのも春特有の光景であり、まさに匂える色彩と言える。さらに掲句の場合、視覚的なだけの紫ではなく、「春の野」全体から感じられる心理的な感覚もより強調されているものと見るべきだろう。
さらに、普通の叙法からいけば「春の野に下り立てば吾も紫に」となるところを、詠い出しに「吾も」をもってきているのは、技巧的なものというより作者の抱いた思いがそのまま口を突いて出た感動によるものであり、それが句の全体を一本のこころの調子で貫くことで、かえって格調高く感じられてくる。
そうして写生に立脚しながらも、同時に心境を詠い、心理を描写する中で、自由に翼を広げていった作者について、大野林火が「近代的な女性の俳句は立子さんあたりから出発するのではないかと思う」と言っていたのも、確かにうなづける。
4月1日におうし座から数えて「生きた交流」を意味する3番目のかに座で、上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、そんな作者のごとく自分を絶えざる成長と変化の中に走らせていく感覚を大切にしていきたいところ。
引いて、越していくこと
現在というものは、未来からくるものです。私たちは普段、何も考えず生きていても自動的に過去から未来に移っていると思ってしまっていますが、これはとんでもない勘違いでしょう。
たとえば「引っ越し」というのは、過去から未来に「引いて」、「越す」と書きますが、これは言い換えれば、生きるということは絶えず「バック・トュー・ザ・フューチャー(後ろ向きの前進)」なのだということの端的な表れなのだと言えます。だから私たちは時々、古い家から身を「引いて」新しい家へと「越して」いかなければならないんです。
そうでないと、古い自分に閉じ込められて、過去に自分が作り出した残像に執着したり、迷いの世界にさまよい込んでしまうから。
その意味で今週は、おうし座の人たちにとって改めて幸せの在り処が過去にではなく、未来からやってくるものなのだと思い直し、「引っ越し」していくタイミングなのだと言えるでしょう。
今週のキーワード
あざみの花