おうし座
エネルギーが澄んでいく
闇に支えられるということ
今週のおうし座は、「めがみえぬ人の夜を澄むさむさかな」(飯田蛇笏)という句のごとし。あるいは、己と共に暮らす楽しみを、ひそかに味わっていくような星回り。
「めがみえぬ人」の世界は、人々が想像するような完全な真っ暗闇ではなくて、どうもかすかに緑がかっていたり、青味がかっていたり、ぼんやり茶色だったりするらしい。
例えば、20代からの度重なる手術の甲斐なく、50年代末には盲目同然となった作家ボルヘスの語る「盲人について」(『七つの夜』)によれば、盲人がないのを寂しく思うのは“赤と黒”であり、ほのかに明るい霧のたちこめる世界で眠らねばならないことが苦痛であったのだと言う。
掲句の「めがみえぬ人の夜」もそういうものだと思って向きあえば、「夜が澄む」ではなく「夜を澄む」とした作者の工夫がより明瞭に感じられてくるはず。
できることなら闇にうもれたい、闇に支えられたい、といった密かな思いにそっと寄り添うように、「さむさ」が視界の曇りや濁りを清めていく。それは愛からも妬みからも、憎しみ、希望、不安からも解き放たれた、純粋な孤独の味わいなのかも知れません。
27日(水)におうし座から数えて「小さな死」を意味する8番目のいて座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、自分を惑わしてきたしがらみが澄んでいき、自由になっている自分を感じていくことでしょう。
ひとでなしになる
人型をなくし、まともな人間ということを意識しなくなっていくことで、私たちはかえって自らを正しくエネルギーの場として思い出していくことがあります。
例えば、お母さんの中から産まれてくる胎児が大きな「螺旋」を描いて、ずばーんと生まれてくる時というのも、人はエネルギーそのものであり、とびきり自由な存在でありましたが、いつからか人は純粋な意味でエネルギーの場であることをやめて、その流れを歪めてしまうのです。
そういう意味では、ロレンスが「文明とは何か。それは発明品などよりも、感性の生活のうちに、明瞭な姿をあらわす」と言ったのは正しかったのだと言わざるを得ないでしょう。
その意味では、「盲人」というのは日頃の私たち自身のことを表すメタファーでもあるのかも知れません。
今週は、そうした純粋なエネルギーという意味での「ひとでなし」に近づいていくことで、まずは、自分が存在しているという事実を、もっともっとポジティブなものとして受け入れられるようになっていきたいところです。
今週のキーワード
純粋な孤独の味わい