おうし座
言葉の深度は歩んだ距離に比例する
定めなき旅へ
今週のおうし座は、「旅人とわが名呼ばれん初しぐれ」(松尾芭蕉)という句のごとし。あるいは、みずからの思想信条を、具体的な言葉やメッセージとして動き回らせていくような星回り。
掲句はのちに俳諧紀行としてまとめられた『笈の小文(おいのこぶみ)』の旅に出ようとした際の餞別会で詠まれた句。
とはいえ、名残りを惜しみつつ旅立っていくという感傷的ニュアンスよりも、弟子の土芳(とほう)が書いているように「心のいさましさ」を感じさせます。
初しぐれが降り始めた晩秋の定めなき空のもと、自分もまた定めなき旅に出ようとしている。人から「旅人」と呼ばれる身に早くなりたいものだ、と。
そんなどこか世間や社会を意識した、芭蕉のアウトサイダー宣言とも言えるかもしれません。
世の人が旅人に、定住者は漂泊者に、インサイダーはアウトサイダーに、いつなんどき転じてしまうか分からないのが芭蕉の人生であり、芭蕉の望んだ生き方でもあったはずです。
今週のあなたもまた、どこか旅に出ていく芭蕉のように、自分の言葉や行動をもっと自由に動き回らせていきたくなっていくでしょう。
泉光院の行脚
江戸時代の山伏で、全国津々浦々を旅した「野田泉光院」という人がいます。
現代人と比べると、昔の日本人というのはとにかくよく歩いていたことで知られていますが、江戸時代に全国を自由に旅した記録を残した人は何も芭蕉だけではありません。
この泉光院という山伏は、56歳で宮崎の佐土原を出発してから6年間で南は鹿児島、北は秋田まで何度も往復しつつグルグルと旅を続けて歩きまくった様子を旅日記として残しています。
やはり超人的な健脚で、その気になれば山道を一日に60キロも歩き通したそうで、しかも粗食と重労働の続く長旅のあいだ病気らしい病気もしなかったのだとか。
また泉光院の旅日記をパラパラと参照していると、行く先々でいろいろな人に贈り物やちょっとしたボランティアをしている記述が出てきて、その機転の利きように目を見張るのですが、やはり老いたる者の強みとはこういうところに出るのかもしれませんね。
おうし座のあなたもまた、何はともあれ身体が資本であり、未来を呼び込む器であると肝に銘じ、暇を見つけては歩くよう心がけてみてください。
言葉というのはそうした動きから生まれ、それはやがてあなたの思想信条へと結晶化していくはずです。
今週のキーワード
心身相関