さそり座
思いを贈る
梅二振り
今週のさそり座は、「二もとのむめに遅速を愛すかな」(与謝蕪村)という句のごとし。あるいは、よくない状況でこそ自分から先に与えていく姿勢を徹底していくような星回り。
立春をすぎて、東から風が吹きはじめると、梅の季節がやってきます。ただ、この場合の二つの「むめ(梅)」とは、単に実際の風景を写生したものというよりは、人づてに自分のことを他所で嘲っているという噂が耳に届いた樗良(ちょら)という俳人と自分を喩えた比喩表現だったようです。
作者とは俳風(作品ににじみ出たその俳人の作風)も異なる相手でしたが、せっかく自分や門人たちに刺激を与えてくれそうな相手との交流が断たれてしまうのは他の何よりも耐えがたいことであると感じたのでしょう。早々に相手への敬意を示して、いらぬ恨みや濡れ衣(自分も相手を笑っているという噂もたっていたため)を晴らすべく掲句を申し送ったのだそうです。
梅の木が二つあれば、早咲きもあれば、遅咲きもあるでしょう。その咲き方の異なり具合こそが梅の鑑賞を豊かにしてくれるのであって、早咲きの梅だけでなく遅咲きの梅を愛でてることこそ、俳人の本懐ではないですか。というのが、おおよその句の大意。
作者は樗良より13歳年上でしたが、樗良は当時すでに45歳であり、江戸で困窮していたのを京都の作者を頼って京都に身を寄せたところでしたから、おそらくここで遅咲きの梅の木に喩えられていたのは樗良のことだったのだと思います。
同様に、2月8日にさそり座から「パートナーシップ」を意味する7番目のおうし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、互いに高め合える相手を見つけたなら、多少の流言や悪い噂に振り回されることなく、自分から素直な思いや敬意を示していきたいところです。
花束を贈るように
誰かに何かを贈呈しようという場において、狭い心は厭わしい。狭すぎて、善も悪も居場所がないから。花束を贈るのに、善人でなければならないという条件がある訳でもなし。
むしろジキタリスやスズランをはじめ、古来より美しい花には毒はつきものだった訳で、渡す相手の死を誘うための花束だってなかったはずがありません。それがたとえ徒花であったとしても、自分ひとりで膨れあがっているより、手向けにした方が余程いいと感じる人だって、決して少なくないはず。それがほんの一刺しになるのか、それとも大いに元気づける結果となるか、賭けてみるのも一興でしょう。
だから、それが好奇心に毛が生えたものであれ、長年の思慕であれ、へたに抑え込むのではなく、賭ける機会が訪れたなら、蕪村のように躊躇しないことです。その意味で、今週のさそり座ならば、そんなふうにいつも以上に自分をさらけ出す勇気と積極性とを発揮していくことができるはず。
さそり座の今週のキーワード
梅の花言葉は「高潔」と「忠実」、ジギタリスの花言葉は「熱愛」と「不誠実」