さそり座
希望を先に置いておく
星
今週のさそり座は、「夜を帰る枯野や北斗鉾立ちに」という山口誓子の句のごとし。未来に向けて、雄大な希望を抱いていくような星回り。
これは12月に詠まれた句で、季節感としてまだ少し先のことにように思うかもしれません。しかし今のあなたはそんな風に、すこし先のことを見通していく頃合いに入ってきているのだと言えます。
かの有名な北斗七星はタロットの「星」のカードのように、先の見えない状況に差す一条の光のような「希望の元型」とも重ねられます。それはまっさらな状態に身を置くことで初めて見えてくるものであり、受け入れていくことのできるもの。
体の半分を闇に溶かしつつ、「どんな闇の中にも光は存在するのだ」というつもりで、今週は自らの明るい未来を力強く宣言していくといいでしょう。
野尻抱影さんの最期
冥王星の命名者である野尻抱影さんは、戦後の真っ暗な気分をせめて星で晴らそうと、ずいぶんたくさんの星の伝承に関する随筆を書かれた方。
彼は晩年、
「僕はね、オリオン座の右端に墓所を決めてあるんですよ。」
「オリオンのね、長方形の四つ角のところ、そこにはねえ、神話に出るアマゾン女兵が……得意の盾を持って槍を持って立っている。これが僕のオリオン霊園の番人ですよ。」
などとよく冗談を言っていたそうです。しかしそれが本気で言っていたのだということが後に分かります。それは野尻抱影さんが亡くなられたとき。
「野尻先生が亡くなられたのは、1977年10月30日の早暁で、午前2時45分であったとうかがったのは、その晩のお通夜に連なったときであった。そのとき一つの思いがひらめいて、帰宅するなり私は机辺の古びた星座早見を取りあげていた。日付と時刻を合わせ、オリオン座が南中しているのを見た時、「ああ、やっぱり」と思った。さらに定規をあててみて、子午線上にまさしくオリオン座γ星ベラトリックスがあるのを確かめたとき、私の心は分別ざかりの五十男のそれに似つかわしくもなく、異常に波立っていた。「野尻先生は、ほんとうにオリオン霊園に行かれたのだ」と、私は一人うなづいた。」 (原恵、「永遠に憩いたまえ、ベラトリックスのかたえに」)
ベラトリックス(ラテン語で「女兵士」の意)とは、おそらく先に亡くなられた奥さんのことでしょう。野尻さんはずいぶんなロマンチストであり、また預言者でありました。
今週のキーワード
自分を待ってくれている星を見つける