さそり座
意思による肯定を
無意味を超えて
今週のさそり座は、コリン・ウィルソンの「アウトサイダー」のごとし。あるいは、「人生そもそも何の意味があるのだ」という問いに改めて向き合っていくような星回り。
「自分がもっとも自分となるような、つまり最大限に自己を表現できるような行動方式を見いだすのが「アウトサイダー」の仕事である。(中略)「アウトサイダー」は、たまたま自分が幸運に恵まれているから世界を肯定するのではなく、あくまでも自分の「意思」による肯定をしたいと願う。」
そんな「アウトサイダー」という輪郭を、著者はニーチェやカミュ、ドフトエフスキー、ヘッセなど様々な人物やその作品を例にとりながら鮮やかになぞっていきます。
この本の主題は、「私たちはなぜ日常に倦怠してしまうのか?」という一点の疑問に集約することができますが、これは現代人はなぜ飲酒やドラッグ、いじめや不倫をやめられないのかといった問いと置き換えることもできるはず。
日常が退屈だから。そう答える他ないところを、著者は例えば「(自分には)才能もなく、達成すべき使命もなく、これと言って伝えるべき感情もない。わたしは何も所有せず、何者にも値しない。が、それでもなお、なんらかの償いをわたしは欲する」のだと述べていたりします。
これは本当にその通りで、みんな人生という不可解なものの内では結局なにも所有することができないからこそ、なにか可能なものを成就しようとして、醒めながら手を動かすのかも知れません。
10日にさそり座から数えて「逸脱」を意味する、11番目のサインであるおとめ座で満月を迎え、同じタイミングで水星が順行に戻っていきます。今週のあなたもまた、怠惰に陥るのでもなく、機械にお任せするのでもなく、自分の眼と手足でもって、より困難な試みに挑んでいくことをみずからに課していくことになるでしょう。
若き日のチェ・ゲバラ
ブエノスアイレスから7歳年上のはとこと連れ立って始まり、ベネズエラのカラカスで終わるおよそ1万2千キロの米大陸横断の旅は、『モーターサイクル・ダイアリーズ』として映画化されていますが、その製作総指揮にあたったロバート・レッドフォードは或るインタビューで次のように語っています。
「僕はなぜ彼がチェ・ゲバラになったかという部分に興味があった。エルネスト(チェ・ゲバラの本名)は旅を進めるうちに、腹黒い政府や団体によって住む場所を奪われてしまった人々の健康や幸せについて考え始める。彼は最後に「自分にはやるべきことがある。自分はこの旅で変わった」と相棒のアルベルトに語る。この旅は彼にとって“発見”ないし“啓発”の旅となったんだ。」
なぜチェ・ゲバラは旅に出たのか。それは「勝ちたい」からではなく、自分という一つの“星”の軌道・運の祝福の有無・行き着く先の未来をおそらく「知りたい」と思ってしまったからでしょう。
「アウトサイダー」とは、そうして予感に導かれるようにみずからの運命を必死に手繰り寄せようとした人々の総称なのだと思います。
今週のキーワード
運命愛