さそり座
激しくも花を手向けるのみ
得体の知れない激しさを
今週のさそり座は、「雄鹿の前吾もあらあらしき息す」(橋本多佳子)という句のごとし。あるいは、与えられるばかりでなく、誰かに与えられるだけの愛を燃え広げていくような星回り。
鹿は万葉の時代から、秋を代表する哀調を帯びたもの悲しい「鳴き声」として詠まれてきましたが、秋は鹿にとっては交尾期で、雄鹿が雌鹿を求めて鳴いているのが実際のところ。
掲句において作者はそんな「雄鹿」の荒々しさをわが身に引き寄せて詠んでいる訳ですが、それはただロマンチックな空想に浸っているのではありません。
鹿は一雄多雌で、雌をめぐって雄同士激しく角を突き合わせ、命がけで争います。つまり、悲しく聞こえる鳴き声の裏には、そうした激烈な現実が潜んでおり、作者はそうした真実をここで捉えているのです。
おそらくは、おのれの中にある得体の知れない激しさを改めて発見したのでしょう。
14日(土)にさそり座から数えて「情念の解放」や「求愛」を意味する5番目のうお座で満月を迎えていく今週は、ある種のカタルシス(浄化)を経験していくことができるはず。
花束を贈るように
何かを贈呈しようという場において、狭い心は厭わしい。狭すぎて、善も悪も居場所がないから。花束を贈るのに、善人でなければならないという条件がある訳でもなし。
むしろジキタリスやスズランをはじめ、古来より美しい花には毒はつきものだった訳で、渡す相手の死を誘うための花束だってなかったはずがない。
それがたとえ徒花であったとしても、自分ひとりで膨れあがっているより、手向けにした方が余程いい。それがほんの一刺しになるのか、それとも大いに元気づける結果となるか、賭けてみるのも一興だろう。
だから、それが好奇心に毛が生えたものであれ、長年の思慕であれ、へたに抑え込むのではなく、自分が注ぎ込めるものがあるのなら、もう躊躇しないことだ。
今週のあなたならば、そんなふうにいつも以上に自分をさらけ出す勇気と積極性とを発揮していくことができるはず。
今週のキーワード
美しい花に毒はつきもの