うお座
ダウナーでいこう
これでいいのだ
今週のうお座は、『跳びあがることなくスケート終へてお茶』(野口る理)という句のごとし。あるいは、一歩進んで二歩下がっていこうとするような星回り。
冬と言えばスケート。スケートと言えばフィギュア風のジャンプ。ジャンプと言えば回転と高さ!
という訳で、意気込んでリンクに降り立ってはみたものの、結局一度も跳びあがることなくスケートを終え、ほっこりお茶を飲んでおります、という何とものどかな一句。
と同時に、『天才バカボン』の「これでいいのだ」というセリフがサブリミナルに効いてくるような句でもあります。すなわち、血のにじむような苦しい練習や、ケガや失敗などの高いリスクをとって華麗な技をキメ、万雷の拍手やきらびやかな脚光を浴びることをよしとする人生もあれば、スイー、スイーと何ごともなく平面を滑りおりては、平和にお茶をすすり、茶飲み話に花を咲かせる人生もある。
そうした穏やかなしあわせを味わうことで、ついつい「ドラマチックでなければ人生じゃない」とばかりに快楽志向に歪んだ脳みそを解毒していけるのも、俳句や占いに共通した効用なのかも知れません。
1月23日にうお座から数えて「ネタ化」を意味する3番目のおうし座で約5カ月間続いた天王星の逆行が終わって順行に戻っていく今週のあなたもまた、ベタな王道を追いがちな人生に遊びを持たせるべく自身の日常をネタ化してみるといいでしょう。
「狂い」の効用
皮肉にもうまくいっている時ほど人はつまづきやすく、思い上がりや傲慢さほど人を狂わせてしまうものはありません。しかし一方でそうした人間やその運命の自然なリズムを狂わせる要因をあえて意図的に用いることで、人類は宗教を生み出してもきました。
その点について、例えば先史学者ルロア=グーランは『身ぶりと言葉』という本のなかで、次のように述べています。
自然のリズムの破壊、夜明かし、昼夜の逆転、断食、性的禁欲などは感性論よりも宗教の領域を思わせるが、それはただ近代文明においてこの二つがほとんど完全に分離されているからだ
つまりこうした感性と宗教の分離の結果、ふつうの感性を持った大多数の人たちは非宗教化されたリズムのなかで平穏な生活を送れている訳ですが、逆に言えば、平穏な生活が行き詰まってきた時こそ、「夜明かし、昼夜の逆転、断食、性的禁欲など」によって人類は昔から狂ったリズムを整えてきた訳です。その意味で、今週のうお座もまた、あえてそうした「休止符」を日常に打ち込んでいくにはちょうどいいタイミングと言えるでしょう。
うお座の今週のキーワード
休止符を打ち込んでいく