うお座
スロー&ライフ
文明との距離感を探るべく
今週のうお座は、『海女(あま)小屋の電気メーター回りをり』(杉原祐之)という句のごとし。あるいは、思い切ってプラグを1つ抜いていこうとするような星回り。
古代から続く最も原初的ななりわいの1つである素潜り漁をする「海女」という存在も、陸にあがって小屋に戻れば電気製品を使っており、それを「電気メーター」内部の円盤が回っていると、あえて即物的に表すことで驚きを込めたのでしょう。
とった海の幸を保管しておくための冷蔵庫かもしれないし、衣類や作業着などを洗うための洗濯機かもしれない。はたまたエアコンか、電気ポットの線もあるでしょう。いずれにせよ、完全に文明と距離をおいたり断絶して生活することは、想像以上に難しいことなのかも知れません。
しかし見方を変えれば、掲句は完全にライフラインを電気に頼りきって暮らすことのリスクが、ますます高まっている昨今の状況に対するひとつの打開案としても受けとれます。すなわち、すべてではなくても自分の食べるもの1つくらいは自分の手でなんとかしてみようと。これは、着るものであってもいいし、住む部屋であってもいい訳です。
その意味で、7月29日にうお座から数えて「暮らし方」を意味する6番目のしし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、巨大な産業構造に暮らしの何もかもを外注してしまうのではなく、自分の手で自分の暮らしを取り戻すための一手を打っていきたいところ。
われ思う、ゆえにわれあり
皆どこかで一度は聞いたことがあるのではないかというくらい有名なこの一節ですが、一方で、この言葉ほど多くの人に「分かったつもり」になられている言葉もないでしょう。
デカルトはこの世界の普遍的真理を認識していく上での出発点として、あえてすべてを疑いつくすという「方法的懐疑」を掲げ、その到達点として冒頭の一節に至った訳ですが、その過程をまとめた『方法序説』を書くまでに、彼はじつに41年の人生を生きました。
もちろん、着想自体はもっとずっと若い頃に既にあった訳ですが、それを自分で検証するために十分な期間をかけて世の中を遍歴してまわっていったのです。本の中にも、次のような箇所があります。
ある種の精神の持ち主は、他人が二十年もかかって考えたことすべてを、二つ三つのことばを聞くだけで、一日で分かると思い込み、しかも頭がよく機敏であればあるほど誤りやすく、真理をとらえる力も劣っている。
とにかく分かりやすく、早く、一度で分かることに価値を与える現代人にとっては、なかなか耳の痛い指摘ですが、少し遠回りしてでも自分らしさを取り戻したい今のうお座にとっては、こうしたデカルトの姿勢は大いに指針となっていくはずです。
うお座の今週のキーワード
プラグを抜いていく