うお座
行ってお帰り
※2021年3月1日~3月7日の週間占いは、公開を延期とさせていただきます。(2021年2月28日追記)
廃墟と宇宙的郷愁
今週のうお座は、出発点としての廃墟のごとし。あるいは、何かを始めることのできる地点を求めていくような星回り。
廃墟というものを魅力的なものに感じさせる要因には、過去から遠い未来へと突き抜ける時間的感覚やその独特のスケール感がありますが、かつて日野啓三さんは次のように述べました。
私にとって廃墟に立つことは四十億年という遥かなる帰郷の旅であり、同時にめくるめく未来へと連なるコスミックな力を実感し直す劇である(『廃墟―鉱物と意識が触れ合う場所』)
これは例えば時間的な広がりの表現に限界のある絵画ではもたらすことのできない体験であり、「コスミックな力」の感受は空間的なスケールの広がりによって初めて可能になるものでしょう。
また、日野さんは「廃墟は始点であって、終点ではない。そこで立ち止まり立ちつくしてはならないのである」とも述べており、これは彼の戦争後の焼け跡体験から得た境地なのかも知れません。
27日にうお座から数えて「劇」を意味する7番目のおとめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、ひとつ焼け跡を背負ったつもりで過ごしてみるといいでしょう。
底なし沼には何が潜むか
焼け跡や廃墟と言ったって、そんなものどこにあるんだよと思った人は、まず目を閉じて、今の自分の日常をぐるりと見回してみてください。そこにあるのは喜びや楽しさや、満ち足りた気持ちだけでしょうか?
嬉しかったことや楽しかった記憶が浮かんだ後、しばらく無心で心の底を覗いていれば、そこには必ず不安や焦り、嫌悪、反発、怒りなど、様々な不純物がまるで水底に沈殿する澱(おり)のように次から次に浮かんでくるはず。それもまた廃墟なのです。思想家の井筒俊彦さんは人間の意識世界について触れる中で、
底の知れない沼のように、人間の意識は不気味なものだ。それは奇怪なものたちの棲息する世界。その深みに、一体、どんなものがひそみ隠れているのか。(『意識と本質』)
と書きましたが、まさに今週のうお座はそうした自分の心中の「底なし沼」に目を凝らし、そこから反転して改めて光のあたるこの世界に目を向け直していくことがテーマなのだと言えるかも知れません。
今週のキーワード
ぐるりぐるぐる