うお座
ちっぽけだけれどそれでいい
一ト間の地球
今週のうお座は、「月さして一ト間の家でありにけり」(村上鬼城)という句のごとし。あるいは、なかば観念するようにみずからの境涯に安んじていくような星回り。
作者は耳が不自由な聾者で、困窮した生活を送っていた人ですが、この句はけっしてそうした生活の貧困さを嘆いているのではありません。
月光に照らされた「一ト間」の家を見て、今更ながら、これで十分じゃないか、ということに気付いたのです。
どこか芭蕉の「一つ家に遊女も寝たり萩と月」という句を思わせる一句ですが、実際、作者は8人の娘と2人の息子を儲け子宝には恵まれた人でした。掲句を詠んだのは大正4年、作者が50歳の頃。
その心には、世を生きているとついバラバラになりがちな身や心を、地球というひとつの家のもとに結びつけてくれる月が、さぞかしまるく浮かんでいたのではないでしょうか。
10月1月から2日にかけて、みずがめ座から数えて「声と現象」を意味する2番目のおひつじ座で特別な満月を迎えていく今週のあなたもまた、我が身の置きどころのリアルな実情に改めて気付いていくことになるはずです。
媚という毒を抜いていく
山田詠美の『ぼくは勉強ができない』の主人公でイケメン男子高校生の秀美くんの好きなタイプは、剥いても剥いても玉ねぎが玉ねぎであるような人でした。つまり、他人からどう思われようと自然体でいられる人間。
そして、逆に「人に好かれようと姑息な努力をする人を見ると困っちゃうたち」で、実際にそういう女子に「困っちゃうんだ」なんて余計な発言を重ねて、「お前もな」といった調子で見事にやり返され、次のような内省を繰り広げていくのでした。
「人には、視線を受け止めるアンテナが付いている。他人からの視線、そして、自分自身からの視線。それを受けると、人は必ず媚という毒を結晶させる。毒をいかにして抜いて行くか。ぼくは、そのことを考えて行かなくてはならない。」
これはそのまま今週のうお座の課題でもあるように思います。
秀美くんは思春期の男の子らしく「皮むき器でぼくのおかしな自意識も削り取ることができればいいのに」なんてひとりごちる訳ですが、そこはもう、皮なんて剥く必要のない自分自身というものを知っていくべきでしょう。
今週のキーワード
月からの視線を受け止める