うお座
月と杯
星は優しく静かに人を試す
今週のうお座は、野尻抱影の「星無情」という言葉のごとし。あるいは、自分の力で変えられることと、どうしたって変えられないこととをジッと見極めていこうとするような星回り。
原爆忌に寄せた文章の中で、天文民俗学者の野尻抱影(のじりほうえい)は「人間が異常な事件に遭遇した時に、いつも感じるのは、月や星が冷厳なことである」と述べ、個人的な経験として「私も娘が亡くなった前夜、四方空襲の火の空で、いつもと変りなく輝いている星に強い憤りを感じた」と書いています。
地上のことなどお構いなしとも言わんばかりに、空が澄みわたってさえいれば、そこには必ず月がけろりと浮かんでくる。
星は無情なり。しかし、それは星がこちらに都合よくその顔を変化させたり、過保護な親のように甘やかし、追従してくれないというだけで、星はいつも変わらぬ調子で囁きかけてくれているのではないでしょうか。
だからこそ、星は思い通りにならぬことの中にも、受け取り学ぶべき事柄があり、そこにいままで見えていなかった豊かな世界が広がっていることを、いつも静かに教えてくれているのだと思います。
7月5日にうお座から数えて「受け取る愛」を意味する11番目のやぎ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分が本当に必要としているものを受けとっていくだけの成熟を遂げているのか否か、図らずも浮き彫りになっていく瞬間が訪れるはず。
月は不思議と青いから
ただ厳密に言えば、いつも同じ顔をして同じように通り過ぎていく太陽と違って、見上げるごとに違う顔をしている月の存在は新石器時代の昔から人類にとって変化の象徴であり、哲学と宗教の起源でもありましたが、それは何よりも月の「青さ」によって現われているように思います。
「月がとっても青いから~遠廻りして帰ろう~♪」という歌もありましたが、なぜだか昔から月と言えば青いと相場が決まっているのはじつに不思議です。
実際、スペクトルをとってみるとそれほど青くはないのですが、これも恐らく、月という存在そのものが人間のシャドウの部分を刺激するからなのでしょう。つまり、生命のうちに宿る「涼しさ」、すなわちゾッとする感覚を過剰に引き出してしまう。
今週は月からの啓示(しらせ)を待ちつつ、静かに心の準備をしながら過ごしていくつもりでいるくらいがちょうどいいでしょう。
今週のキーワード
タロットの杯=ハート