うお座
沈黙に言葉を浮かべていく
きちんと言葉を減らすこと
今週のうお座は、「バカだなと目が言うホットウイスキー」(火箱ひろ)という句のごとし。あるいは、間違えようのない明白なサインを送ったり、読み取っていったりするような星回り。
ほの暗いバーカウンターの情景が、自然と浮かび上がってくる一句。おそらく「バカだな」と慰めているのは男性で、慰められているの後輩か、はたまた人生に迷った年若い客という線もありえます。
もしかしたら、男性は本当にバーのマスターで、店にやってくる人間と時おり掲句のようなやり取りをしているのかも知れません。
もちろん、日本語の「バカ」という言葉は、使われる文脈によっては正反対の意味を持ちますが、掲句の場合そのどちらであるかは明らか。
寒い季節には、たくさんの言葉で言い表わすよりも、かえって言葉を減らした伝え方でこそ心は和み、癒されていくものです。
27日(水)にうお座から数えて「役回り」を意味する10番目のいて座で新月が起きていく今週のあなたもまた、そんなマスターや女将など、自分が演じるべき役柄になりきって過ごしてみるといいでしょう。
間合いのレッスン
掲句のような情景を自分のものにして演じていくには、感情がほとばしるような状況で自分なりの楽な呼吸で間合いをきちんと置いていく、ということが一番大事なのだろうと思います。
例えば、田辺聖子の『言い寄る』に次のようなやりとりが出てきます。
「明日の晩、取りにきて。一人でね」 と言った。
「どうして晩なの?」
「夜の方が仲良くなりやすい」
なんてことはないさりげないやり取りに見えますが、最後の一行には書かれていない間合いがあり、そこできちんと言葉を減らした分だけ、相手に伝わっていく何かがあることが分かると思います。
おそらく、言う方も、言われる方も、このやり取りの後には何かがそれ以前と決定的に違ってきてしまうでしょう。
今週のキーワード
呼吸と感情の黄金比