てんびん座
岐路をゆく
さよならだけが人生ならば
今週のてんびん座は、『海に出て木枯らし帰るところなし』(山口誓子)という句のごとし。あるいは、「帰るところ」という発想を頭からなくしていこうとするような星回り。
リズミカルに繰り返される寒々しさがむしろ潔く、清々しささえ感じられる一句。
「木枯らし」に限らず、一度旅立ってしまえばみんな本当は帰るところなどないのだと、むかし誰かが言っていましたが、確かに“仮の宿”に過ぎないものをつい安住の地と勘違いしてしまうのが人間の悲しい性なのでしょう。
その点では、サラリーマンも主婦(夫)もホームレスも特攻隊員もみな同じ。そもそも、やたらと帰りたがるばかりでは、どこにも遠くへは行けないし、見知らぬ遠くまで行くことができなければ、過去を捨てることもできない。すなわち、人生という旅が旅として成立していかないはず。
ならばいっそ、近所の見慣れた木立を抜け、岐路や境い目をいくつも越えて、その度に過去という過去を捨て去っていければ、広い海に出て波の音しか聞こえなくなった頃には、すでに「帰るところ」なんて狭苦しい発想そのものが頭から消えているかも知れません。
同様に、24日にてんびん座から数えて「歩みだし」を意味する3番目のいて座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、分かれ道に突き当たったら見慣れぬ道の方へと足を進めてみるといいでしょう。
純粋な意図
昔から分かれ道に大きな樹が一本生えている三叉路が好きだったのですが、夜にそこを通ると、昼間とはまったく異なる暗い影を落としていて、こちらの心を試し、迷わせてきたものでした。
どちらの道を行くか、その時のインスピレーションだけで決めるということを何度かやっていると、たまに「あ、こっちで正解だった」と妙に確かな手ごたえを感じることがあって面白かったのですが(散歩なので、本来ならば特に決まった正解などありません)、振り返ってみると、おそらくそれは雰囲気に流されないで、そのときどきの自分の体調や気分にちょうどマッチした方の道を選べたという感覚だったのだと思います。
考えてみれば、私たちはいつも頭に誰かの顔や視線を意識して、無意識のうちにその意図を汲みとって行動していて、純粋に自分の意図だけに集中して何かを選択をするということがほとんどできてないか、たまに出来たとしても苦手なのではないでしょうか。
その意味で今週のてんびん座もまた、人の顔色をうかがうのではなく、ただ自分の身体や感情とがマッチした最高の瞬間に集中し、それに従って何かを選ぶということをしてみてみるといいでしょう。たとえ、たとえ誰か何かとの繋がりが切れていくとしても。
てんびん座の今週のキーワード
純粋に自分の意図だけに集中して何かを選択をする