てんびん座
終末幻視
こちらは6月21日週の占いです。6月28日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
定められた運命の予見
今週のてんびん座は、ダーフィット・バイリーの「ヴァニタスのある自画像」のごとし。あるいは、新鮮な気持ちで一回性の神秘としての人生を向き合っていくような星回り。
若い男が右手に絵を描くときに用いる画杖という道具を手にする一方で、左手を絵にかけている。男は画家で、オランダの画家ダーフィット・バイリーの自画像なのですが、自画像を描いたとき、すでにバイリーは67歳でした。
すなわち、自画像のなかの若い男は、自身の約40年前の姿であり、さらに男が左手で支えている小さな楕円形の画面には、十年ほど前に描いた自画像がはめられています。つまり、ここには若いころの自分と、すこし前の自分の姿が描かれており、それらを描いた現在のバイリーの姿はありません。
「ヴァニタス」とははラテン語で「空虚」「むなしさ」を意味する言葉であり、中世以来の「メメント・モリ(死を想え)」という主題と同じく、寓意的な静物画のジャンルのひとつとして盛んに描かれました。
実際、バイリーの自画像においても、若い男が腰かけているテーブルの上には、髑髏とともに宝飾類やコイン、消えた蝋燭、花、楽器、ひっくり返った杯などが、所せましと並べられ、さらには空中に二つの大小のシャボン玉が浮かんでいます。
はかなく消えるシャボン玉の脇で、若い男は自身もやがて老いて死にゆくことを悟り、やがて自身の元にも訪れるであろう定めを予見しているのです。
25日にてんびん座から数えて「ものごとの終わり方」を意味する4番目のやぎ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、10年前よりもより深く、そうした定めと向き合っていくことになるでしょう。
発心のきっかけ
平安時代に貴族であった大江定基は、三河守として任国に連れて行った女が病いにかかりついに帰らぬ人となった際、悲しみのあまり昼も夜もなく遺骸に寄り添っては生前のように声をかけ、唇を吸うことまでしたのですが、やがて「あさましき香り」が口から漂うようになって泣く泣く埋葬するに至ったのだそうです。
定基はこれをきっかけに「なぜ他ならぬ自分がこれほどまでに苦しまなければならないのか?」という思いに憑かれて出家し、寂照と名を変えて天台教学と密教を学び、やがて宋に渡海して紫衣と円通大師の号を賜り、そのまま帰国することなく現地で亡くなりました。
つまり、一介の中級貴族を円通大師たらしめたのが愛する人との死別であり、その残酷な運命を朽ちていく死体のなまなましい観取を通じて受け入れていった体験だった訳です。
これはある意味で今週のてんびん座にとっても必要なプロセスとして言えるかも知れません。
てんびん座の今週のキーワード
目覚めつつある未知なもの