てんびん座
神秘性をどこかに宿す
造化の神秘
今週のてんびん座は、「スミナガシ」という蝶のごとし。あるいは、誰かに押しつけられた勝手な妄想を削いで自由になっていくような星回り。
スミナガシは中型の大きさの黒っぽい蝶で、翅を開いていると青光りがして、うまく言葉では説明できないような複雑な模様になっており、それを昔の人は「墨流し」と形容して名前を付けたのだそうです。
言われてみれば、確かに水の表面に墨を流し、それが自由気ままに流れていくのを和紙で写しとったようにも見えてくる。しかも、それがひらひらと暗い雑木林の中を飛んでいるのだから、なおさら幻想的に写る。
思わず、熟練の職人の手による工芸作品が命を得て、工房の窓から脱け出してきたかのような空想にも駆られてしまいますが、翅の模様に加えてもう一つその特徴として際立っているのが口吻(ストロー)の赤。
まるで紅生姜のような実にあざやかな赤の口吻は、人間の押しつける勝手な綺麗事を裏切るかのように、まさに生きた虫のなまなましい存在感を放っているのです。
9月2日にてんびん座から数えて「自分なりの美学」を意味する6番目のうお座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、誰が何と言おうとこれだけは譲れないという自分なりのこだわりを貫いていくといいでしょう。
人として大きくなったつもりでいよう
「人は努力している間は迷うに決まっているものだ」
「精神の意志の力で成功しないような場合には、好機の到来を待つほかない」
「死を考えても、私は泰然自若としていられる。なぜなら、われわれの精神は、絶対に滅びることのない存在であり、永遠から永遠に向かってたえず活動していくものだとかたく確信しているからだ」
例えば上の3つのようなセンテンスの組み合わせは、ゲーテの言葉がいかに健康的かということを端的に表しているように思います。
それはある種の鈍感さとも言えるものですが、ゲーテというのはどこか人間を自然の一部として大きな視点から見ているようなところがあるのです。
だから読んでいると、自然と自分も大きくなったような気がしてくる。でもそれでいいんです。人として小さくなった気がするより、ずっといい。
今週のてんびん座もまた、そんなゲーテの健康的な鈍感さをぜひとも見習っていきたいところ。
今週のキーワード
泰然自若