てんびん座
見つめて目を離さない
写生の要点
今週のてんびん座は、俳人の目のごとし。すなわち、対象から掴み取った情感を凝縮させていくような星回り。
俳人の飯田龍太は、写生という手法の要点は「見つめて目を離さない」ことにあるのだと述べていました。つまり、見つめて、心のなかで普段は感じることのない別途の実感が湧いてくるまで目を離さない。
冬の枯野を見てそれを描写するのでも、パッとそれを見て瞬発的に「荒涼とした」とか「ひっそりとした」といった言葉をどこかから借用してくるのでは写生とはとても言えないでしょう。
例えば、「遠山に日の当たりたる枯野かな」と詠んだ高浜虚子のように、実景を目を細めて眺めているうちに、尾を引くように響いてきたのだろう情感をそっとのせた言葉というのは、読む側としても描写が鮮やかに目に浮かんでくるものです。
その意味で、12日(火)にてんびん座から数えて「対象への没入没頭」を意味する8番目のおうし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、これはと感じた対象を前にした際には、日ごろ絶え間なく続く思考をいったん止め、いかに俳人の目を持って向き合っていけるかどうかが問われていくでしょう。
童心と繋がる
あるいは、俳人の目を養うということは、絶えず子どもに返り続けるということでもあるのかも知れません。
赤い花を見て、手にとり、口にいれ、苦くて泣いていた子供が、やがて、その花を「美しい」と感じ、お母さんの髪に挿したいと望み、花を摘む。そして、お母さんにプレゼントし、お母さんが花を喜び、その喜びを見て自分も喜ぶ、というふうに変わっていく。
そんな子供の成長してゆく姿をみていると、人は自然と畏敬の念で心を満たされますが、どれだけ年をとったとしても、人間である限り、人はいつまでも心のどこかに子供の自分を持ち続けているものなのではないでしょうか。
そうして他ならぬ自分自身の中にも、踊るように目まぐるしく動き続ける子供のこころが宿っているという事実を、今週のてんびん座はまざまざと再確認していくことになりそうです。
今週のキーワード
鮮やかな感情のよみがえり