しし座
怖い怖いも好きのうち
鏡花の場合
今週のしし座は、「髪長き螢もあらむ夜もふけぬ」（泉鏡花）という句のごとし。あるいは、おっかないけれど目を向けずにはいられないものを、直視していくような星回り。
「髪の長い螢」とはいかにも怪奇好きの鏡花らしい発想ですが、どこか脳裏にこびりついてくるような強烈なインパクトがあります。道脇にのぞく闇の奥に不気味さを感じることはあっても、そこで明滅する螢そのものに恐怖を感じることは稀でしょう。
その意味で掲句は、鏡花がその病的な想像力が生み出した幻想を詠んだものな訳ですが、人は得てしてあり得ないはずのものを心中で生み出しては、それに勝手に怯える本能のようなものがあるのだとも言えます。
いま、あなたには心のどこかで恐れているものはありますか？
もしあるのなら、それはやがて現実化してあなたの前に立ち現れてくるでしょう。それが今週なのか、もう少し先になるかは分かりません。
けれど、そうした恐怖の種は、既にあなたの心中に確実に根を張り、いまかいまかと花咲かせる時を待っているはず。待ちに徹するか、みずからのぞきにいくかはあなた次第です。
下心のない好奇心
大抵の場合、人は自分の利害に関係あることだけに熱中しがちですが、一方でそれが、人間活動全体の内でいかに微々たるものなのかということは忘れがちです。
われわれはその短い生涯のうちに、地球というこの不思議な惑星と、それが宇宙の中で占める位置づけについてできるだけ知っておく必要があるのではないでしょうか。
その点について、例えば『幸福論』で有名なかのラッセルは「幸福をもたらすもの」という章の中で、次のように述べています。
「この世界は、悲劇的、喜劇的、英雄的、奇怪な、また不思議な物事に充ちている。世界の提供するこの壮大なスペクタクルに興味を持てない人々は、人生の差し出す特典の一つを失っている」
ここでいう「特典」とは、いい気晴らしであるばかりでなく、ある種の賢者が持ちあわせる特有のバランス感覚であり、それこそが私たちに幸福をもたらしくれるものなのです。
今週は、自分に利益のない興味や好奇心に従って、幸福とは何たるかに想い馳せていくといいでしょう。
今週のキーワード
怪奇と幸福＝水木しげる
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