しし座
生活の必要条件
姿勢をただす
今週のしし座は、『クリスマス馬小屋ありて馬が住む』(西東三鬼)という句のごとし。あるいは、いつの間にか当たり前になっていた人生の「足し算」を崩していこうとするような星回り。
クリスマスの日、馬小屋には馬が住んでいるという、ごく当たり前のことを当たり前に言っているだけの句です。しかしながら、作者の頭の中には戦争の最中、住んでいた家を外国人に買い取られて追い出され、住む家さえなくフラフラしていた際の記憶がこびりついていたのでしょう。そこにたまたま、クリスマスの日に、暖かそうな藁をしいた馬小屋に、のうのうと住んでいる馬を見かけて、堪えきれないほどの羨望を覚えたのかも知れません。
そこには、馬小屋で生まれたイエスの逸話も含まれていたはず。つまり、人間が住む家だけでなく馬小屋さえもないという、二重の意味で疎外された家無しの存在としての自分がここでは強調されている訳です。
ただ逆に言えば、それでも人はどうにか生きるものだという、どうか呆れ返ったような素直な驚きと同時に、それが自分の忘れてはならない原点なのだという思いもまた掲句の根底には横たわっていたのではないでしょうか。
その意味で、23日にしし座から数えて「整理整頓」を意味する6番目のやぎ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、いま当たり前のように生きてしまっている何気ない日常に対して「本当にそれは必要か?」という問いを発していくくらいでちょうどいいでしょう。
リズムを刻むということ
文豪ディケンズは、日々の日課として、また創作のヒントを得るため、あてどない散歩にいそしんだと言われています。散歩やぶらつきなどというと、仕事の生産性に直接関係しない無為な時間と思われるかも知れませんが、手も足も自由な暇な時間や、意識の空白というのは、日常から一歩離れて生の全体を見渡すためには欠かせない必要条件と言えるのではないでしょうか。
例えば、俳句の5・7・5というリズムも、古代の舞踏のリズムや、海洋民がオールを漕いでいたときのリズムにその起源があるとも言われていますが、いずれにせよ座ったまま、足を窮屈にしている状況からは、伸びやかなリズムというのは決して生まれてこないものです。ただじっとしていると、どうしても言葉が煮詰まってきて、スムーズに流れなくなる。そして何より、リズムから外れた不要なものが分からなくなってしまう。
その意味で、今週のしし座は歩くリズムや、踊るリズム、オールのリズムなど、自分に合ったリズムを改めて身体に刻んでみることで、要不要の境界線を探ってみるといいでしょう。
しし座の今週のキーワード
引き算は散歩から