しし座
例えば猫のまなざしを
観察している「私」
今週のしし座は、『冬籠(ふゆごもり)君の寝言を彼は解す』(藤田哲史)という句のごとし。あるいは、目に見えない以心伝心のはずみがついていくような星回り。
炬燵にはいって本や漫画を読みふけったり、映画やドラマをまとめて見たり、人を呼んで一緒に鍋をつついたりと、冬には家にこもってぬくぬくする楽しみがありますが、掲句もまたそんな冬ごもりの何気ない情景を描いた一句。
炬燵でそのまま寝入ってしまった「君」の言葉にもならない言葉を、「彼」はこともなげに解してコップの水を置いてあげたり、クッションを頭の下にはさんであげたりしている。そして、そんなふたりの様子をさりげなく観察している「私」はいったいどんな表情を浮かべているのでしょうか。
それは掲句の3人がどんな関係性かによるわけですが、先の心温まる様子を踏まえると、「君」と「彼」を第三者の視点から眺めている作中の「私」とは、なんとなく具体的な生きた人物というより、高いところから2人を見守ってくれている存在や、まだ生まれていない2人の子どものような気もしてきます。
これは「ふゆ」という言葉がもともと「殖(ふ)ゆ」から来ており、「ふゆごもり」もまた、やがてやってくるいのち芽吹く春に備えて、生命が内にこもり新たな「ちから」を得ていく営みを意味していたことも大きく関連しているのではないでしょうか。
その意味で、12月8日にしし座から数えて「受けとる愛」を意味する11番目のふたご座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、思いがけぬ存在や、決して知りえない存在に見守られているのだというつもりで過ごしてみるといいでしょう。
猫の人間観察日記
例えば、猫はよくそばにいる人間を観察しています。そして観察しながら、いつも不思議に思ってしまうのです。職場からある日突然人がひとり消えたとしても、飲み会で途中で席をたち帰ってしまったとしても、人間が自分で必死に思い込んでいるほど、大して悪いことも良いことも起きはしないのに、と。
彼ら人間は大抵苦しくなるまで、じっと耐えているのですが、それが猫には不思議で仕方ない訳です。さっさと家に帰って好きな本を読んだり、気心の知れた友達とおしゃべりしていた方が、心にも体にも、そして霊的にもずっとよいのに、なぜそうしないのだろう。
いや、寝ても覚めても、大きい方にも小さい方にも、自分の価値のことばかり気にして生きているのが人間なのだ、と猫はそこで気付いてしまう。一方で、寝食を忘れるほど、何かの追求に夢中になっている人間がいるということも、猫はどこかで知っている。
そんな錯誤と欺瞞の過剰に彩られた人間風景も、漆黒の宇宙の圧倒的な何もなさを背景に見据えると、やっぱり一夜の夢か、1週間で終わる蝉の人生のようにはかなく、愛おしいものだし、猫はそんな自分の立場に存外満足しているのではないでしょうか。今週のしし座はそんな猫の視点も、ときどき頭の隅に置いてみるといいでしょう。
しし座の今週のキーワード
ふゆじたく