しし座
記憶の芋堀り
転がり出てきた真実を
今週のしし座は、「地の底の秋見とどけし子芋かな」(長谷川零余子)という句のごとし。あるいは、どこかで分かっていたことを改めて深く実感していくような星回り。
親芋のそばに出来た子芋(こいも)。それを掘り出した際の作者の感じを詠った句。この子芋は大地の底の秋がどんなものであるかを見届けてきたと言うのである。
地上の秋に何が起きてきたのかということに関しては、自分が見聞きした経験以外にも、今ではさまざまなニュースやSNSをはじめネットの情報によっても確かめられますし、われわれはそれについてよく知っているものと考えがちですが、実際のところその水面下の真実とは何であったのか、少なくとも自分にとって大切なことは何だったのか、ということに関しては相変わらずよく知らないのではないでしょうか。
その意味で、作者に代わって子芋が見とどけてきたという「地の底の秋」とは、つまり日頃の日常的な自分の観点とは異なるパースペクティブから、ひょいと自分自身や、自分のよって立っている現実を見つめ直した結果、掘り出され、転がりでてきた真実のメタファーであるとも解釈できるはず。
そこには思っていた以上に複雑なせめぎ合いがあったのか、逆に何もなく、がらんとした空洞がただ広がっていただけなのか。それは作者自身がどこかで分かっていたことでもあるように思います。
11月5日にしし座から数えて「心の真実」を意味する4番目のさそり座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、ここしばらくのあいだ放置していた実感を、ひょいと掘り出してみるといいかも知れません。
人生の土壌
日本人の先祖ははるか3万年ほど前に海をわたってこの列島に住みついたと言われています。そして、その中には舟とともに籾をつんで、稲作をはじめた人もいたのでしょう。それ以来、この日本では稲作を中心に社会は栄え、夏には田植えをして、秋には稲刈りをするという作業を気が遠くなるほどに繰り返してきたのです。
気の遠くなるほど田を掘り返しても、列島の土壌から豊かさは失われることなく、そこに住む日本人に富と豊かさをもたらし続けてきてくれた訳ですが、それと同様に、あなた個人においても、これまで何度も何度も繰り返し心の豊かさを与えてきてくれたものが必ずあるはずです。
ただ、そこにはさまざまな実りだけでなく、忘れ去られた記憶の数々も埋まっているはず。今週のしし座は、そんな自分の下で静かに横たわっている人生の土壌について思いを馳せてみるといいでしょう。
しし座の今週のキーワード
異なるパースペクティブ