しし座
自然に自然を重ねる
どうにもならない、それがいい
今週のしし座は、「野分雲湧けど草刈る山平ら」(飯田蛇笏)という句のごとし。あるいは、どこか恬淡とした諦めの気持ちが湧いてくるような星回り。
山の上のほうで草を刈っていると、「野分」すなわち野の草を吹き分ける強い暴風や台風がやって来そうな恐ろしい雲が湧き出したのだという。
けれども、別に怖れもせずにやはり草を刈り続けているというのです。これは作者が寒い甲州の山中での生活のなかで会得したひとつの透徹した心境のなせる技なのか、それとももともとの気質なのか。
少なくとも、ここには何かをたくらんだり、のしあがってやろうといった俗情もなければ、何に苦しむところもなく、まさに自分もまたひとつの山のごとくどっしりと構えた余裕があります。
よく「あるがままに」とか「自然体で」などといった言葉を使いますが、それはコンクリートにかこまれた無機質な空間では土台無理な話で、掲句のような雄大な自然と実存をかけて向き合っていくなかで、おもむろに湧いてくるものなのではないでしょうか。
10月6日にしし座から数えて「よみがえり」を意味する3番目のてんびん座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、無理なく自然なかたちで気力が満ちてくるのを実感していくことができるかも知れません。
生きた自然として在る
「整体」という言葉が普及するきっかけをつくった野口晴哉は、自然に生きるとは何も獣のように山野を駆け回ることにあるのではなく、「白い飯を赤き血にして、黄色き糞にしていく」そのはたらきにこそあると述べました。
いわく、
生の食べ物を食べても、生水を飲んでも、海で泳いでも、森の中に入ってもそれが自然なのではない。人間という集合動物が街をつくり、その中に住んでいたって決して不自然ではないのだ。ただその生活のうちに生の要求をハッキリ活かすよう生くることが、生くる自然であることだけはハッキリしておかなければならない(『月刊全生』)
彼に言わせれば、もっともらしく喧伝された健康法を気にしているうちは、外部に自分の自意識を満足させてくれる材料を探している状態に過ぎないのかも知れません。それが例え、「何の不自由もない」ように見えたとしても。
今週のしし座もまた、あなたの身の内にある“よりよく生きる要求”すなわち自然の言うことに耳をそばだて、そこに外なる自然としての食べ物や環境を重ねていくといいでしょう。
しし座今週のキーワード
マクロコスモスとミクロコスモスの照応