しし座
自分の世界を作りなおす
息と霊
今週のしし座は、旧約聖書の『ヨブ記』の一節のごとし。あるいは、改めて大いなる息吹をからだに取り入れていこうとするような星回り。
「神のルアーハ(息)がわたしを造り
全能者のネシャマー(霊)がわたしに命を与えたのだ」(ヨブ記・33・1)
宗教における経典などでは、しばしば同じ内容のことを別の言葉で繰り返し表現して、その意味を強調する手法が用いられるのですが、この旧約聖書の記述においても、ルアーハとネシャマーはほぼ同じ意味で、神からくるその生命原理が創造した人間に命を与えるということを二行にわけて述べられています。
しかし、同じヨブ記の「神のネシャマーがまだわたしの鼻にあり、わたしのルーアハがまだ残っているかぎり」(27・3)といった表現などを見ると、厳密にはネシャマーの方は呼気(吐く息)であるのに対して、ルーアハはその息が身体の中に入った後の状態を指しているように思えますし、ルーアハがしばしば「霊」とも訳されるのはそうした理由からなのでしょう。
しかしそれでも、人間が生き生きとした存在であるためには、からだの内部にみずからを超えた大いなる存在の息吹からなる霊を内包して初めてそれが可能になるのであって、こうした考え方からすれば、いくら健康的な食事と睡眠をとってポジティブシンキングを心がけたとしても、それだけでは決定的な何かが足りないのです。
15日にしし座から数えて「たましいの支え」を意味する4番目のさそり座で新月を迎えていくあなたもまた、惑星の運行であれ歴史の繰り返しであれ、改めて日常的な尺度をこえた大きなスケール感を体感に落とし込んでいくことがテーマとなっていくでしょう。
霊と歌
古代ギリシャでは吹いているものを「プネウマ」と呼び、それは自然のなかの風だけでなく人体を吹く呼吸でもあって、風は息となり、音や歌になっていきました。
例えばインドでは、呼吸する風の始まりを、大きく口をあけた「ア」とみなし、風を結ぶ方は口をしっかり閉じた「ン」とみなし、その途中に「ア」から「ン」までのすべての音のバイブレーションをイメージしつつ、できるかぎり長く息を吐いて持続発声させていく。
これが有名な「オーム」というマントラ(聖音)であり、インドやチベットの古典的なマントラすべてに使われているものです。そして、それはちょうど植物が黒い種子から柔らかい芽を出し、緑の葉を茂らせ、色とりどりの花を咲かせ、ふたたび褐色の土地へと戻っていく過程で、自然界の全色を通過していくのに似ています。
そして新たな風が身体を吹きぬけていくということは、新たな宇宙の創造していくことでもあるのです。今週のしし座も、どうかそれくらいのつもりで最初の言葉やはじめの呼吸を意識していくべし。
今週のキーワード
オーム!