しし座
もっと悲しくなろうよ
穴は知らぬ間に光を吸い込んでゆく
今週のしし座は、歩く太陽黒点のごとし。あるいは、胸中にぽっかり空いた穴へ向けて、「わたしはあなたを鎮めるために生きていかねばならない」とうそぶいていくような星回り。
「うそぶく」という言葉には、
①大きなことを言う、豪語する。
②詩歌を口ずさむ。
③とぼけて知らん顔する。
④動物が吠える。
などいくつかの意味がありますが、これらを自分の「胸にぽっかり空いた穴」に対して取られた行動と解する時、ばらばらの言動やアクションとしてではなく、一連の連続ドラマのように有機的に結びついていくように感じられます。
この「穴」とは、身の周りの者、別れていった者、死者など、あなたにとって懐かしさや歓びだけでなく、怖れやためらいの影が差し、時に悔悛の念を起こさせる他者との記憶の断片であり総体であり、頭の中に浮かんでは目の前を流れていく情景でもあるはず。
しし座から数えると死を意味する8番目のうお座の位置で新月が起こる今週は、ある種の「弔い」や心の深いところでの対話といったことがテーマになってくるでしょう。
セラピストとしてのスピノザ
17世紀オランダに生きたユダヤ人哲学者スピノザは、人間は自然の一部であり、したがって決定的に自然を超えることはできない、という「自然一元論」とも言うべき立場をとったことでも知られています。
彼の立場からすれば自然の一部に勝手に「害虫」や「危険区域」などのレッテルを貼って、人間側の都合に基づいた環境破壊を正当化する行為こそ、自己破壊であり、悪に他ならないと考えました。
こうした彼の立場をより身近な対人関係に置き換えていくとき、彼の紡ぐ言葉はそのまま「弔い」における実践的な基準を指し示し、私たちを自己回復へと促してくれます。
「(人は)自分の憎むものが否定されるのを想像するとき、人は喜びを感じる。だが、人は、自分の憎んでいるものが破壊されたり否定されたりすることを想像するとき、心から喜ぶことはできない。」
なぜでしょうか。その理由として、彼は次のようなひと言を提示してきます。
「われわれの憎むものが否定されたり、他のわざわいを被ったりするのを想像して生じる喜びは、必ず心の悲しみを伴っている」
自分で自分を癒すために、まず自分がすでに抱えている悲しさをしみじみと感じていきましょう。
今週のキーワード
自己回復のプロセスとしての弔い