しし座
労働と対価
価値創出のカラクリ
今週のしし座は、「神はしも人を創りき神をしも創りしといふ人を創りき」(香川ヒサ)という歌のごとし。あるいは、自分の価値をめぐるカラクリを思い出していくような星回り。
人が自分の価値を思い出す時というのは、いったいどんな時なのでしょうか?
こうした問いは、今週のしし座の人らの琴線に触れていくはずですが、掲句はまさにそうした問いに応えていくためのヒントをくれるように思います。
神は人を創りたもうた。これはまさにその通りと言わざるを得ませんが、人は人で、そういう神を自分たちでつくりだしたのだと主張し始めた。
だとすると、神は自分を創ったという人を創ったことになり、なんだか互いの尾っぽを咥えあっているウロボロスの2体の蛇のような構図になっていることが分かります。
面白いのは、作者はのちにこれと対となる句を作って置いていること。
「人はしも神を創りき人をしも創りしといふ神を創りき」
これ、「人」と「神」を入れ替えただけと思うかもしれませんが、まったく逆の立場から眺めてみることではじめて、価値というものは初めて見えてくる効果を鑑みれば、じつに心憎い作者の演出ではないだろうか。
それほど、今週のあなたは自分のしでかしていることの大きさを、鮮やかな反転のなかで改めて認識していくことになるでしょう。
働くことの意味と価値
工場で仕事する者の姿に美しさを見出し、自らもまた工場労働に身を投じていた哲学者シモーヌ・ヴェイユは、「労働と神秘」という章の中で次のように述べています。
「人間の偉大さとは、つねに、人間が自分の生を再創造することである。自分に与えられているものをつくり直すこと。自分が仕方なく受けとっているものをも、きたえ直すこと。労働を通じて人間は、自分の自然的な生をつくり出す。」
労働には、決して売り上げや労働力など単に数値で置き換えることができない何かがあって、それは自分を「きたえ直」していくことで、新たな人生、新たな未来を「つくり出す」ことなんだ、と言うのです。
ただ働く、仕方なく給与として代価を受け取る、そうしたマンネリの輪から抜け出すこともまた、「自分のために働く」ということに違いありません。
価値の想起は、再創造において自然に産まれてくるものでもあるのです。
今週のキーワード
神を創り直す