ふたご座
それらもう無効
春の浄水場
今週のふたご座は、『それらもう無効浄水場の春』(佐藤智子)という句のごとし。あるいは、さわやかな“更新の夢”の中に思いきり浸かっていくような星回り。
節気が「雨水」に入り、水の温度があがってくると、ふだん入ることのできないろ過池や浄水場などの処理施設も一般公開され見学できるようになるため、水中も地上も多くの生きものの気配で賑わい、次第に水も命も息を吹きかえしていきます。
掲句の「それらもう無効」というのが具体的に何に対して向けられた言葉なのかはよく分かりませんが、過去に囚われたまま、どこかで凍結していた時間が、ふたたび流れ始めていく時の、解禁の悦びのようなものがここには込められているのでしょう。
水には澄んだ水と濁った水といった二分法とともに「浄化」というテーマがついて回りますが、春の浄水場が暗示するのは“更新の夢”であり、ひとは今も昔も新しくなって蘇る際には、必ず水の中へ浸かってきました。
それがちょっとしたリゾート地の温泉であれ、金だらいの冷たい水であれ、いったんどこかへ流れ出し、循環のなかを渦巻くようになった水は、凝り固まった記憶と共に硬直し、耄碌(もうろく)してゆくたましいを目覚めさせ、若々しさを取り戻してくれるもの。
27日に自分自身の星座であるふたご座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、そうして目を覚ました額の下で、新しい眼が活気づいていくはず。
人は時おり別人になっていく
例えば、天候や食事や運動量、果ては星回りなどちょっとした条件で私たちの体の在り様はガラリと変わってしまうものですし、逆に毎日同じ体調を維持し続けることほど不可能な芸当はないでしょう。
そして、私たちはしばしばそれまでの自分とはまるで別人になってしまったような劇的な変化を遂げてしまう時がある。何かが一時的に乗り移ったのか、本当に別人になったのかは分からないけれど、とにかくそういうことがあるのです。
人は一生のうちに何人の別人になっていくのか。それはもちろん個人差があるはずですが、2人や3人ということは滅多になく、おそらく多い人で20人弱くらいまでは行くのではないでしょうか。いずれにせよ微妙な変化になればなるほど、人に言われてみないと自分では気付かない。そして、私たちはそうした別人としてバラバラにある自分を無意識のうちでとりまとめ、統合しようとしてみたり、それに失敗したりする。
今週のふたご座もまた、複数の自分間のズレや不一致が心地よく感じられるポイントをできるかぎり繊細に感じとってみるべし。
ふたご座の今週のキーワード
水面の乱反射と1/fゆらぎ