ふたご座
魂の水分を取り去る
こちらは8月9日週の占いです。8月16日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
眼差しの奥にあるもの
今週のふたご座は、「駄駄走り来て小水の彼岸婆婆」(河野静雲)という句のごとし。あるいは、ただ静かにありのままに世界の姿を描いていくような星回り。
「彼岸婆婆(ひがんばば)」とは、彼岸会に来る信心深いお婆さん達のこと。彼岸会は春分ないし秋分前後の7日間に行われますから、時期としてはまだ取りあげるにはだいぶ早いのですが、あえて引用してみました。
ほとんど棺桶に片足をつっこんでいるような婆婆たちは、手を振り足を振り走りまわって、挙句に「小水(小便)」までする。作者は時宗の僧侶でもあったそうですから、これは実際の光景をもとにした作者の漫画であり諧謔であり、一歩間違えれば鼻持ちならぬものになってしまいそうなところをよく止まっているのは、作者が当てもの芸に溺れず、一段高いところから婆婆たちを眺めているためかも知れません。
知らんぷりをしてはじっと眼をそそいでいるような作者の眼差しの奥には、長年にわたり間近なところで生老病死や人間の業を見つめ続けてきた者特有の、賑やかな描写とは裏腹の深い静けさが感じられはしないでしょうか。
ふたご座から数えて「生き生きとした交流」を意味する3番目のしし座で8月8月夜に新月が形成されたところから始まる今週のあなたもまた、冷笑的になるのでも適応的になりすぎるのでもなく、できるだけありのままに物事を見つめていきたいところです。
知恵の塩を携えて
まなざしの光が冷たいものとなるか、温かいものとなるかは、端的に言ってユーモアの量によるでしょう。ここで唐突ですが、隠喩的理解の伝統に基づく「錬金術」において、余分な水分を蒸発させ、乾いた残留物からさらに別の混合物をつくる工程について考えたいと思います。
これは、本来は軽やかで乾いた状態を最上とする「魂」の成分に、あまりに多くの液体が混ざると腐敗しやすくなり、淀んだ気分から逃れることができず、悲嘆と陰気に駆られるうちに、粘り気をもった泥沼のようになっていくと考えられていたという背景を知れば、いささか分かりやすいものととなるはず。
つまり、過去を削って事実を乾燥させ、感情のしがらみを浄化させていくことで、剝き出しの骨や本質だけが残り、それがやがて人生に対する塩辛い洞察を含んだ知恵の塩になっていくものとされたのです。
ことほど左様に、乾いた魂というのは、この世界を客観的に見つめ得るだけの知恵の塩、すなわちユーモアとウィットを携えているものであり、今週のふたご座もまたそうした魂の乾燥工程を経ていこうとしているのだと言えるかも知れません。
ふたご座の今週のキーワード
深いしずかさ