ふたご座
塩に導かれて
少しずつおのれを自由にしていくこと
今週のふたご座は、スピノザの「自由」のごとし。あるいは、みずからを自由にしていこうとするような星回り。
現代では「自由」と言えば、「小さな政府と市場の自由」を掲げる新自由主義のように、拡大する格差のなかでの残酷な自己責任論やその表裏としての(メーガン妃や小室圭さんのような)強烈な上昇志向という文脈やその不可能性において使われることが多いのではないでしょうか。
その点、17世紀の哲学者スピノザはそれとは異なる観点から「自由」ということを考えており、例えば主著『エチカ』の冒頭で次のように述べています。
「自己の本性の必然性のみによって存在し・自己自身のみによって行動に決定されるものは自由であると言われる。これに反してある一定の様式において存在し・作用するように他から決定されるものは必然的である、あるいはむしろ強制されると言われる。」
ふつう必然なら自由ではないですし、必然と対立する状態こそが自由とされていますが、ここで言われている「必然性」を「その人に与えられた身体や精神の条件」に置き換えると幾らか分かりやすいでしょう(國分功一郎、『はじめてのスピノザ』)。
つまり、スピノザは人は自分に与えられた(身体的・精神的)条件をあらかじめ分かっている訳ではなく、さまざまな”実験”を繰り返しながら学んでいくことで、少しずつ人は自由になっていくのだと考えたのです。
29日にふたご座から数えて「自己投機」を意味する5番目のてんびん座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、まずはみずからの本質が踏みにじられている状態(「強制」)から脱していくことを最優先にして動いていきたいところです。
知恵の塩
スピノザにおける実験のモチーフは、どこか「錬金術」の作業における、平たい蒸発皿で余分な水分を蒸発させ、乾いた残留物からさらに別の混合物をつくる工程を連想させます。
これは、本来は軽やかで乾いた状態を最上とする「魂」の成分に、あまりに多くの液体が混ざると腐敗しやすくなり、淀んだ気分から逃れることができず、悲嘆と陰気に駆られるうちに、粘り気をもった泥沼のようになっていくと考えられていたとと大きく関係しています。
つまり、過去の事実を乾燥させ、感情のしがらみを浄化させていくことができてはじめて、”実験”は進んでいくのであり、そうした乾燥過程から生まれた人生への塩辛い洞察を含んだ塩を得ることで、はじめて人は自由になっていくことができるのです。
ことほど左様に、自由すなわち軽やかで乾いた状態の魂というのは、ユーモアとウィットを携えているものであり、今週のあなたもまたそうした魂の乾燥工程を経ていこうとしているのだと言えます。
今週のキーワード
軽やかで乾いた魂