ふたご座
手間と想起
垢抜けた面白味を大切に
今週のふたご座は、「茄子焼いて冷やしてたましいの話」(池田澄子)という句のごとし。あるいは、ひと手間をかけることで、ついどこかに置き忘れがちなものを引き寄せ、実感を深めていくような星回り。
焼き茄子を肴に一杯やる。それはもはや夏の定番とも言える光景のひとつですが、作るのにはなかなか手間のかかる料理で、ただ網で焼くだけではなくて、その後にしばし冷やして皮をむいてやらねばなりません。
けれど、それがかえって垢抜けた面白味を感じさせるのでしょう。作者はそうした調理工程に、「たましいの話」を接続させてみせた。
その意味で、これはおそらく近しい死者の弔いの句であり、実際に誰かとその人のことを話しながら焼き茄子を作ったのかもしれないし、作者にとって調理すること自体が無言の会話だったのかもしれない。
いずれにせよ、こうした句に触れていると、家には家の、人には人の弔い方というものがあり、それは、面倒だけれど面白味を感じさせられる「ひと手間」を加えていくことに他ならないのだという気がします。
25日(木)にふたご座から数えて「意識の深層」を意味する12番目のおうし座で下弦の月を迎えていく今週は、慌ただしい日々の中で見失いがちなものを思い出し、静かに語りかけていく時間を大切にしていきたいところ。
過去との共生
どんな人の中にも、自分を支え続けてくれている記憶というものがあります。ただ、それは滅多なことでは思い出せず、普段の日常では影に潜んで、まるでいない振りをしている。
けれど、どんなに鋭い痛みであれ、思い出すのも苦しい後悔であれ、その「過去」なしには現在の自分はありえないのだと感じているのであれば、その苦しみの記憶はあなたの側から離れていくことはなく、ときどき不意に思い出しては、これからもその「過去」と共生していかなければならない。
すっかり馴染んでしまったようで目に写らず、どこにもいないようで確かに存在している。
今週のふたご座の人たちは、そんな記憶が意識の死角を突くようにして、すぐそばに流れ込んでくるものがあるかもしれません。
今週のキーワード
無言の会話