やぎ座
化けさせてくれるもの
単なる比喩を超えて
今週のやぎ座は、「大冬木黄金の棒の如き時」(上野泰)という句のごとし。あるいは、単なる一個人がかけがえのない尊い存在へと“化ける”際の諸条件に思い当っていくような星回り。
作者が長野県の小諸に疎開し、俳句を学び始めた頃の思い出にみずからふれた次のような一節があります。
小諸の冬は寒かった。地の中核から中天に一本の鋭い棒がきりきりと舞ひ立つて行く様であつた。吸取紙がインクを吸ふ様に一歩外を出ると頬も鼻も寒さを吸ひ取つて赤くなつた。
そうしてみると、掲句における「大冬木」もまた、作者の空想上の「一本の鋭い棒」に重ねられており、こうした擬人法的隠喩による静物の生命付与が作者の俳句上の大きな特色となっていることが分かります。
ただ、こう叙されてみると、掲句の「大冬木」が同時に、生きた生命をもって把握された人間の姿―おそらく作者自身の像でもあることが感じられてくるはず。そうして、じっと見つめたものの中からおのずと湧き上がってきた生命感の内在が、この句を単なる比喩を用いた説明文以上のものにしているのでしょう。
25日にやぎ座から数えて「ツキ」を意味する11番目のさそり座で下弦の月を迎えて行く今週のあなたもまた、自分がどれだけ他者や時代に支えられ、ツキに恵まれてきたのかということに改めて気が付いていくはず。
自分にとっての「プライスレス」とは何か?
大人同士の夜
テレビもケータイもいらない夜
新しい自分に目覚める
夢と冒険のはじまり
例えば、かつてマスターカードのCMで紹介されていた「プライスレス」な贈り物の中身は、どれもその人たちの人生の中でそう幾度もはないだろう貴重な「体験」や、味わう価値のある特別な「瞬間」でした。
人生は長いようで短く、けれど意識すればそれなりの準備期間を設けることができます。戦乱で重症を負って故郷に隠遁した元武将のラ・ロシュフコーは「われわれは幸福も不幸も、自己愛に見合う分しか感じることができない」という箴言を残しましたが、この「自己愛」という部分を「何かを好きである強度」に置き換えれば、自分にとって「プレイスレス」な贈り物とは何かを考えることは、あなたを化けさせる“諸条件”を明らかにし、言わば「黄金の棒の如く」輝くための準備を進めていくことでもあるはずです。
今週のやぎ座は、人であれモノであれ体験であれ、自分への人生をかけたプレゼントとして捉え、思いを馳せてみるといいでしょう。
やぎ座の今週のキーワード
だんだん好きになってきたもの