かに座
根を張るべき現実のありか
「地に足つける」とき
今週のかに座は、「山門を出れば日本ぞ茶摘唄」(田上菊舎)という句のごとし。あるいは、自分がこれから根を張る先を見定めていくような星回り。
この「山門」とは、京の洛外・宇治の黄檗(おうばく)山万福寺のそれ。この由緒あるお寺の開祖は明から渡ってきた僧であり、当時の万福寺は文化の震源地としての中国文化の粋を集めた、文化人憧れの地だったのだそうです。
作者は江戸時代の女性俳人で、彼女もまたすっかりその中国的雰囲気に浸って夢心地になったであろうことは十分に推察できます。
ですがそうして山門を出たところで、どこからか風に乗って茶どころ宇治の「茶摘唄(ちゃつみうた、作業のときに歌う労働歌のこと)」が聞こえてきたのかもしれません。
彼女はそこでハッと我に帰って、思わず「(ここは)日本ぞ」と口にせずにはいられなかったのでしょう。そうして口にされた「日本」という言葉には、政治屋のつかうそれとは比べものにならないほどの美しさがあるように思います。
それは、真の意味で地に足つけて発された言葉だから。今週のあなたもまた、どこの地にしかと足をおろしていけば、彼女のように美しい言葉を発することができるのか、よくよく熟慮されてみてください。
誰かと共有していく仕合わせ
今週のかに座の星回りは、「人間は大きな幸せを前にすると、急に臆病になる。幸せを勝ち取ることは、不幸に耐えることより勇気が要るの」というとある映画のセリフを思い起こさせます。
本当に大切なものはすぐ目の前にあるのに、そうできない。そうしない。
確かにあやふやな不幸に甘んじているより、霧が晴れた後のようにすべての現実がむき出しになってしまうだけ、幸せになることは怖いんです。
それでも、あなたが臆病風に吹かれたとき、そっと背中を押してくれる誰かの存在や声も既にあなたは知っているはず。ささやかな幸せを誰かと共有し合える、そんな瞬間こそが財産なんだと、今週は改めて実感していけるでしょう。
今週のかに座へのキーワード
幸せと仕合わせ